a flood of circle 『I’M FREE』佐々木亮介インタビュー 【前編】
INTERVIEW[2013.07.15]
●そういう心持ちでアルバム制作に向かったんですね。
佐々木:そうですね。昔だったら、ブルース…今も根っこの部分は変わってないんですけど、普段の生活の中から感じた事を切り取って曲にして、苦しい事をメジャーキーで明るく楽しく鳴らしちゃうっていう強みを、やっとバンドで共有出来るような気がしてて。姐さんて全然ブルースに興味ない人なんですよ、ルーツ的にもね。だけど、姐さんが『tokyo pinsalocks』(HISAYOが他に在籍しているバンド)ずっとやってきて、色々苦労してても、私はこの曲をこう思って演ってるからって感じをちゃんとステージで出してて。そういうのを見て、「ピンサロックスも俺の中ではブルースやってますよ」って言うんですけど。姐さんも「あなたが言ってるブルースってコレだったのね」って、それで分かり合えた感じがあって。だから俺がメンバーに対してブルースを定義していくことで、バンドとして固まったなって。
●渡邊君は初めから一緒にやってきましたけど、彼の中でも変化があったと思いますか?
佐々木:ああ、ナベちゃんも凄い変化を…強いられてる部分もありますけど(笑)。俺のモードがそうなってくると、曲もどんどん変わってくるじゃないですか?今バンドの状態が良いから『月面のプール』をレコーディング出来たっていうのは凄く大きくて。例えばストリングスが入ってたりとか、そういうチャレンジが色々出来るんだけど、そうするとドラムに対するオーダーはどんどん複雑になっていくんですよ。『Dancing Zombiez』の時はバキバキのダンスビートをキメてくれって言うし、『月面のプール』では柔らかいドラミングの音を求めるし。でも基本的にはバカスカやりたいタイプなんですよ、ナベちゃんは(笑)。だから昔はどんな曲書いても、俺はドラマーとしてこうだからっていう回答をドラムでしてたのが、…それはそれで一つの正解としてOKなんですけど、これを言いたいが為のドラミングって何なのかな?っていう事を考えるようになった。そういう意味でナベちゃんも進化していってると思います。でもそんなに器用なタイプでは無いんで。そこはお互い苦労してますけど(笑)。メンバーが変わった事によってイメージが変わりましたって事じゃなくて、今の三人のまま、進化して、タフなロックンロールを作れたのが大きい。
●今回はどんな制作シーズンでしたか?移籍一発目の曲も入っているので曖昧かもしれませんが。
佐々木:ああ、でも制作のスパンはね、そんなに長くなかった。結構、3枚目(『ZOOMANITY』)からアルバム用にいっぱい曲を貯金して選んだりとかやってたんだけど、今は出来たら良いやつから録るみたいな感じで(笑)そういう意味ではスタッフ周りには心配させましたけど(笑)。あんまり曲作りは悩んでないんですよね。曲を作る種を見つけてからは毎回速かったんで。『Dancing Zombiez』は去年の夏ぐらいかな?『FUCK FOREVER』を作ってて、最後に出来たのが『Dancing Zombiez』で、でもこの曲は次のモードに行ってるから、切り離して考えようって事でシングルになって。その時期からだから…制作期間としては去年の秋から、5月ぐらいまでやってましたね。ちょうど、「俺はお前の噛ませ犬じゃないツアー」をやってて、それもデカかったな。『I'M FREE』は北海道公演の時に作ったりとか、『God Speed You Baby』は気仙沼で作ったりとか。曲ごとにシチュエーションがハッキリしてたんですけど、ツアー回ってる時はどんなきっかけで出来た曲でも全然違う街で歌う事になるから、その街で生まれたロックンロールがどれだけ強いモンかって、強度が試される。そういう感覚はありましたね。「かませ犬」のツアーは『FUCK FOREVER』の曲達がどう伝わるか、例えば「FUCK」って言った時に顔をしかめる人もいれば面白いって言う人もいるわけで。特にツアーしながらキャンペーンもやらせてもらったから、ラジオ局とかでもかけられるかけられないっていうのもあって。さじ加減とか細かな選択がされているなって思ったし。ライブにしろメディアに乗っかる時にしろ、出口は関係なくて、俺達が出す物が強ければ絶対大丈夫なはずってツアーの中で確信して。その中で書いた歌詞はやっぱり自分が試されてる感じはある。今、ロックンロールバンドとしてa flood of circleが伝える物が試されてるから、その責任を俺が背負って書いてる。っていう順番で考えてる。そういう意味では全然、苦痛じゃなかった。心地良いプレッシャーじゃないけど(笑)。
●以前「自分の中に在る物を出せばロックになる」って言ってましたが、正にそのモードで、尚且つツアーで感じた事がそのまま出たという?
佐々木:そう、それにバンドがブーストしてくれるっていう、バンドマンとしての自信が今はあるから、良い意味で今はそこに甘えても良いわけじゃないですか。その関係が凄く良い。レコーディングで唄うまでは…「ロックンロール」って古臭い言葉になってるけど、歌詞は最新版で書いてるわけじゃないですか?超リアルタイムで(笑)。その為のアレンジだったり音作りだったり、洋楽も凄い好きだから今っぽい音って何なんだろうって。サウンドメイク、マイクの立て方や距離感、エフェクターは今何がキてるかとか、細かい事全部含めて考えるようになったんですけど。2013年のロックンロールアルバムに必要な物って事で作り上げたので統一感はあるんじゃないかな。
●確かに洋楽っぽいなと思ったんですよ。サウンドアレンジみたいな物が。空間感とか音の鳴りとかまで。
佐々木:ああ、そう思ってもらえると嬉しいです。
●フラッドを聴いてきた人は2013年の最新型のブルースなんだって分かると思うんですよ。真っ正直に、真正面からケンカ売ってきた凛々しさみたいな。
佐々木:昔からブルースをアップデートしていきたいって言っていた意味が、自分でも深くなってきた感じは凄くしてて。今の生活から引き出した、ビリビリくる、でも踊っても許してくれるロックンロール。ブルースがどうこうっていう説明が無くても、どっかグサッと来るもんがあるはず。それがこう、ツアー演りながらレコーディングするとどっちも良いバランスで。創りながら人に会いながら出来ていって、それが交じり合っていった。伝える物を作ろうっていう。
●ちなみに、ライブモードと録音モードで頭ん中切り替えなきゃいけないとかもあると思うんですが、どうでした?
佐々木:結構それ、俺下手なんですよ(笑)。全然ダメなんですけど(笑)、特にレコーディングやってからライブに戻る時がしんどいですね。逆は良いんですよ。ライブの勢いで良いレコーディングが出来たりするから。そういう意味ではツアー演ってからのレコーディングだったから、『I'M FREE』っていうアルバムの為には良い順番だったかなって。ツアーやってるとお客さんとも会えるし、打上げで…悪い酒の時もありますけど(笑)、メンバーとかスタッフとかと熱い話、バンドにとって大事な話をする機会も多いから。これから先の事も当然考えるし。例えば、「失踪した友達」って歌詞に書いちゃいましたけど、過去があって、現在があんだなって分かってきた。今居るチームのメンバーが凄く長くなってきてて。ソネさんも3年ぐらい演ってもらってるし、PAもイベンターの人も長いから、深い話が出来るし。
●確かにフラッド周りのスタッフさんってずっと変わらないですよね。そういう意味で任せられる安心感もありつつ、より深い話が出来る様になって、そこもアップデートしていってると。
佐々木:そう、そういう信頼もあるし、長く一緒にいるから「そこは相変わらずダメだな」って叱られてるし(笑)。叱られるって言うか、そこはそれでいいの?って意見もしてくれて、俺もそれに対して、そこは変えなくていいっしょってトコは言ったりするし。皆、長くやってきてるからこそ見方も分かるっていうか。
●良いっすね。馴れ合いじゃなくてちゃんとケンカが出来る感じですね。
佐々木:そうですね。お客さんともそういう感じでありたいって思っていて、言葉が尖ってても、お客さんにケンカ売りにいってるわけじゃなくて、やっぱり楽しんで欲しかったりするし。ロックンロールはバチバチの所から始まってても結局楽しく踊れる…俺の場合は踊れちゃうっていう(笑)、だってこんなにこのビートが楽しいんだからって。それが必殺技なんだと思うし、だから今バンドが楽しいです。『I'M FREE』は本当に楽しんで作った。…『ZOOMANITY』の頃は、自分達を追い詰めてやっちゃってたのかなって。勿論その中で搾り出せた「良さ」はあるんですけど、今は違くて。
●ダイバーシティの時のMCですったもんだあった、みたいな事言ってましたけど、何かあった?
佐々木:大問題は起こってないですけど、ナベちゃんとの事がデカかった。去年末に、『Dancing Zombiez』と『月面のプール』をシングルで出したんですけど、そのレコーディングですね。前作の『LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL』は、張り切って叩いて良い曲が多かったんですけど、このシングルはガラッと変わって、バキバキのダンスビートとちゃんとしたバラードっていう。ナベちゃんが苦手としている物がバーンと用意されてしまったんですよ(笑)。今バンドが固まってきてるって言えてますけど、その時は、その為にもこの曲達を完成させなきゃいけないっていう、それが山場だったんですよ。
●なるほど。越えなきゃいけない物だったと。
佐々木:ナベちゃんが越えなきゃいけない壁だったし、バンドが越えなきゃいけない壁もあって。だからナベちゃんに俺らも厳しく求めたし。プロデューサーに弥吉淳二さんに入ってもらって、凄くブラッシュアップした磨ききったものを作ろうと思ってたし。それでちょっとナベちゃんが落ち込んじゃったんですよ。俺もどうして良いかわかんなくなっちゃって。俺は俺でやることもあったし、曲も書かなきゃいけなかったし。ナベちゃんを励ます係じゃないけど心配もするし。
●まあ仲間として心配もしますよね。
佐々木:うん、それは俺が心配する事じゃなくてナベちゃんが越えなきゃいけない壁だったんですけど……呼び出して一緒に飲んだり(笑)。普段はそんなことあんまりしないんですけど。飲んでる時は「頑張れよ」じゃなくて色んな話をするじゃないですか。ナベちゃんもそれがあって越えられたのか自力で越えたのかわかんないですけど。どっちにしろ、その出来事が良い方に働いたなって。そんな年末で、年が明けて何かが吹っ切れたみたいで良いレコーディングが出来て、良いのが録れた。シングルの苦労があったから、アルバムではもっと良い対話が出来たんじゃないかなって思ってる。それが出来て、かませ犬ツアーがあって、お客さんには見えない所ですけど、レコーディングの山を越えたのは大きかった。勿論『I'M FREE』の曲も悩んだり考えたりしたんですけど、一番デカイ山はそれだった。ナベちゃんに何を求めているか自分でもスゲー分かったし…自分がバンドマンとして態度をハッキリさせる為の歌詞を書いてる、だからナベちゃんにもハッキリ意思表示しなきゃダメだなって思って。ナベちゃんとだけはやたら長いんで(笑)。悪い意味でもふわふわした関係になってるところがあったんですよ。言わなくても分かるっしょ?でも実は分かってなかったんだね、って事が分かったり。
●それを考えたら、外の方というか、弥吉さんに入っていただいた事は良かったですね。
佐々木:そうですね。整理してくれたり、何より優しいアニキだったんで。ナベちゃんをフォローしてくれたりもして。ほんとはね、そんなことしなくてもポンポンといけりゃあいいんですけど。でもそういうダサイ面を一歩ずつ踏んでいくのが俺達なんだなって(笑)。まあ裏側の面を見なくても、そういう物を越えたシングルとか、ライブを見てるお客さんが、ぐっと入って来てくれてる感じがして。昔よりもっとこう、バンドの内側に入り込んで来てくれてる感じが凄くするんですよ。昔はもっとこう…ツンケンってわけじゃないですけど、こっちからバーンと見せたりしてる感じが、今は一緒に何かを作ってる感じがあるんですよね。だから俺は今お客さんを凄い信頼してるし…それは「ありがとう」っていう事ってよりかは逆に「もっとこっち来いよ!」っていう感じ。Zeppダイバーシティの時も凄くそれを感じたし、だからもっと良い景色を見せたいと思うし。バンドの空気が良くなって、ナベちゃんと一緒に壁を越えたなと(笑)姐さんも勿論そうなんですけど。そうするとお客さんと健康的な向き合い方が出来るっていう(笑)。
●確かに空間の親密度は上がってますよね。一体感とかガチンコな感じが。
佐々木:そう、俺がテンション上がって何言ってんだか分かんない状況になっても(笑)何となく伝わる。それじゃホントはダメだけど(笑)。それに気付けてるっていうのはレコーディングを経てだったんじゃないかな。かませ犬ツアーあって、このレコーディングがあってからの3本の地獄突きツアーで。ステップ踏んだのは自分でも感じてるし。
●はい。超えたからこそに自信も付いたと思うし、それを出せるバンドのモードでもあるし。
佐々木:うん、そうですね。前は変化してしまった事への答えを新しく作っていく感じだったけど、このままもっと強くなれば良いんだって分かったから、もっとスピード上げたいし。全県ツアーもありますしね。

■後編・アルバム全曲コメントはリリース日の17日に公開します。お楽しみに!
(TEXT:朝倉文江)
■公式HP http://www.afloodofcircle.com/

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