Alfred Beach Sandal『DEAD MONTANO』インタビュー
INTERVIEW[2014.01.08]
自分らにしか出来ない、かっこいい感じの音楽がやりたい、っていう。当たり前な欲望しかないです。
ベースも最強だし、ドラムも最強だし、自分も最強の状態でやれたらいいっていう。
なるべく芯みたいなのをしっかり置いて、それにあんまり飾りをつけない感じでやるほうがいいな、
って今は思ってます。

変幻自在の編成を持つ不定形生物 Alfred Beach Sandalが、最強のリズム隊と出会うことで、
スリーピース編成のバンドを主軸とした活動形態となった。
とっつきやすくなっている点もあるが、その語られる世界はやはり独特の手触りを持って響く。
三人であることについて、目指す方向について、アルバム全曲紹介コメントも含めて語ってもらった。
●アルバム『DEAD MONTANO』発売おめでとうございます。インタビューよろしくお願いします。
Alfred Beach Sandal(北里彰久 以下 北):ありがとうございます。よろしくお願いします。
●アルバムはいつ頃から計画というか構想があったんですか?
北:いつくらいかなあ。多分、2012年のとんちまつりの後くらいにはもう録ろうって言ってた気がする。録ってない曲が普通にあって、あとちょっと作れば曲としては足りるから、アルバム作れるな、って。
●そうなんですね。『Rainbow』『Coke,Summertime』とかとんちまつりでやってましたよね。ドラムの光永さんも、ライブの後に、この三人で録音したい、って言ってるんだ、って話してましたし。2012年のとんちまつりで手ごたえというか、反応がよかったからというのもあったんですかね。
北:やってましたね。その日が特にってわけじゃないけど、バンド的な手ごたえはあったかもしれない。

●レコーディングは春くらいからとかですか?
北:始めたのは三月の終わりくらいからですね。でも、毎度のことなんですけど、とびとびでやるスタイルなので、全部終わったのが八月くらいかな。ミックスとかでなんやかんややってたので、それの方が長かったですね。
●順調に進んだ?
北:順調だったかな。でも、体感的には、やっと終わった、って感じで(笑)わりと今年一年、それしか思い出ないですからね。年明けくらいにやろうと思って、アルバム年末に出てるでしょ、だからずっとやってたような印象ある(笑)
●(笑)録音は、全部バンドで録った感じですか?一発録りとか。
北:そうですね。ベーシックに関してはほぼ一発録りです。それにうわものいれて再構成っていう。弾き語りの曲も二曲くらいしかないから、ほぼバンドですね。
●収録曲は、夏くらいまでには全部ライブで披露してますかね?
北:多分やってる。あの、『Dead Montano』だけはやってないですけど(笑)あれはやりようないけど、他は全部やってるかな。殆どやらない曲はあったけど。やっぱ、ライブでやってみないとわかんないみたいのもあるから。
●アルバム用に曲を作るっていうのはしてない?
北:結果的には。でも、多分、最初あった曲はそのままとしても、『ビールの王冠』とか『トーチカ』あたりって、アルバム作ってる最中に作った曲だから、アルバム用っちゃアルバム用なんですけど。アルバム用に作ったのは、『Dead Montano』だけかも。
●全体的に並べたら、弾き語りとバンドの曲とが入ってても、違和感ない感じになってますね。
北:統一感っていうんですかね。流れはいいかな、って気はします。

●今回バンドが主体というか、バンドで作ったアルバム、バンドが作ったアルバムという感じが強いですね。元が、ドラムに光永渉さん(チムニィランタンパレードあだち麗三郎クワルテッット & etc)、ウッドベースに岩見継吾さん(ex.ミドリ、ZycosOncenth Trio &etc)を迎えた三人の編成がよかったところからアルバムが出来てきたんだと思うんですが。
北:そうですね。三人でやった瞬間、これバンドだな、って思ったんで。今は、この三人か一人かどっちかしかないですからね。
●今の、ソロとバンドっていう活動の感じはシンプルで、編成が沢山あった前よりも、観てる方もかなりわかりやすいですよね。
北:それはわかりやすいと思う。三人って、立ってるだけでなんかわかりやすくていいな、って思います。
●とっつきやすくなってるかもしれないですね。
北:そうかもしれないです。バンドのボーカルがソロでこう、パーソナルな感じでやってるっていうのとも違うんだけど…難しいですね。
●楽しみ方が複数あるって感じですかね。
北:うん、それくらいのイメージ。あと、三人っていうのがいいな、って話は、メンバーともするんだけど、四人になると、一気に組織になるんですよ、バンドって。不思議だなって思うんですけど、4からはかなりチームプレイが求められるんだけど、3くらいって、一番個々人の顔が見えて、なおかつチームみたいな。3って絶妙な数なんだな、と思いながらやってます。
●スリーピースバンドが一番いい、って言われるのと同じことですよね。
北:多分そういうことだと思うんですよ。
●理にかなっている。
北:まあ、その分個人がやらなければいけないことが増えるというか、ごまかしがきかなくなるんだけど。三人っていいなと思ってます。結構、2012年は、スリーピースバンドの動画をYouTubeでよく見てたんですよ。ゆらゆら帝国とか、eastern youthとか、Nirvanaとか。なるほどなーって(笑)
●おれらも負けてないぞと(笑)
北:なははは(笑)

●今回のアルバムでは、ギターが特に…進化というか、前はやらなかったことをやってるなと思ったんですが。これはバンド感から来た感じですか?バンドにはこのギターが必要、みたいな。ソロとかも弾いてますもんね。
北:うん。前だったら、デュオとかは個人対個人みたいなことだったから。それでどうなるかな、って。
●セッション感?
北:そういうことですね。今は普通にスタジオとかで、ここはこうしよう、とか話し合うようになったんで。そういう中で、ここはこういうギターが必要だとか…本当に普通のことですね(笑)それがバンドだわ。
●(笑)
北:でも、わりとジャンルでなくて、形としてのロックバンドっぽい感じが三人でやり始めてからあったから、ディストーション踏むしかないかなあ、とか(笑)単純に、今までやったことないことをするのが楽しいから。
●(笑)それがバンドとして普通のことであっても、今までやってなかったことですから、観てる方としても新鮮です。
北:ギター、でも全然うまくならないですけどね。
●そうですか?私含め、周りで聞く声は、ギターよくなったよね!っていうのが多いですよ。
北:いや!ひどいもんですよ!
●(笑)
北:多分、楽器に対して愛着がないんで、おれ。おそらく、曲作りのツールっていうか、歌うための伴奏くらいにしか考えてないから…ほんとマジで下手なんですよねー。
●そうですかねー。
北:いつも、ああーっ…ってなる(笑)でも、他人に任すわけにはいかない感じなので。
●他の人のギターになると、バンドの音が変わりますもんね。
北:タイム感とかが変わるだけで、めちゃめちゃ印象変わるし。だから、自分でやらないと意味ないっていうか。
●弾き語りの時に特にそうですけど、会話する時のリズムみたいなものを音楽で表現する、って言うのがありましたけど、今回バンドになっても、バンド全体の呼吸というか、そういうリズムが感じられるなと。それが所謂バンドだと思うんですけど。
北:そうそうそう。いやでもね、他二人が超すごい。あの二人ちょっとやばくて、おれの変なところとかも、全然崩さないで、いい感じにアンサンブルに出来るメンバーだから。もちろん相性っていうのもあるかもしれないけど、相性がいいから、すんなりこのメンバーになったのかもしれないです。不思議だなって思うんですよね。人と演奏するってことって。
●なるほど。地獄ディスコもバンド感はあったけど、ジャンルを絞ってるのがあったんですよね。
北:そう。一部分にフォーカスあてる感じでやってましたね。その時はそういうやり方。
●今回はバンドとしてがっちり固まってるけど、自由度は今までで一番ある感じですよね。
北:アイディア投げて任せる感じはすごいでかいですね。バンドにもよるから一概には言えないけど、うわもの一個あるだけで、調整がすごく必要になるというか、ここはおれが引かないとだめだ、とかここのベースが、とか細かい調整が必要になる。そうじゃなくて、ぼーんってやったのを生かしつつ、そのままいけるっていうのが三人の強みかな。
●三人でやった上に、足していくのはまた別で可能ってことですよね。
北:録音に関して言えば基本は三人で、その後で、ここにこういう音欲しいとか足りないとかあれば、おれがギターを足すなり、えんちゃん(遠藤里美/片想いbiobiopatata & etc)にサックスやクラリネットを入れてもらったし、コーラス入れたりって感じですよね。だから、土台の部分は三人の共同作業で作って。
●だからバンド感が強い。
北:そうですね。
●CDR『Alfred Beach Sandal』から、1st『One Day Calypso』、EP『Night Bazaar』までの、全ての要素を内包しつつ、それよりも上の、次の段階に行ってる感じがしました、『DEAD MONTANO』。[Discography]
北:そういう意味で、その都度の流動的なプロジェクト、みたいな感じは今回はないですね。
●この人とやるときはこの側面を出す、というのでなく、ということですよね。この三人だとその制限がない。
北:結構好き放題やったっす。
●なるほど。では、アルバムの各曲についてのコメントを。

■Rainbow
●この曲は今までになく曲調がストレートというか、うたものロックの形式になってる気が。
北:いや、ちょっとあれはギャグもありますけどね。サビでこうなったらウケる、みたいな。サビでWeezerみたいになる、むしろそれだけがテーマというか(笑)いい年こいてダサい青春みたいな感じのニュアンスですね、あれは。しがみついてる感じ?(笑)ゾンビみたいな感じですかね。
●(笑)
北:三人で初めてやったのって2012年の12月のTOIROCKで、その時にこの曲を初めてやって。若さについての曲です、って言ってやった記憶がある。
●フォーエバーヤングですもんね。
北:でも、若くないから、われわれは。だからそういうことかな(笑)
●そういう曲だから、ディストーション踏んだってことですよね。
北:そうですね。
●すごい新鮮な感じがしました。
北:全然やってなかったけど今さらになって歪ませましたね。気に入ってます、わりと(笑)
●一曲目でこういう新鮮な感じがきたので、今回違うぞ、ってインパクトがありますね。
北:そうですかね。曲順考える時に、これは一曲目だな、って感じでしたね。

■typhoon sketch
●これは結構前からある曲ですよね。
北:すごい前からありますね。
●携帯で配信してましたよね、そのサイトにインタビューも載ってて。
北:ありましたね。今はあのサイト自体なくなったけど。あれはインタビュー初めてされて。マジでインタビューしてくれるんだ、みたいな。2年以上前?
●確か『One Day Calypso』より前ですよね。
北:すげえ前だ!そんなときからあるんだ(笑)
●あの時配信してたのは、着うたフルかなんかのファイル形式で。あれはあれですごい好きでした。
北:あれはもうデモみたいな感じでしたよね。自分でもどんな感じかよく覚えてないです。弾き語りではずっとやってたけど、それとも全然感じが違うだろうな。
●そうですね。
北:アレンジも大分変わってますもんね。前は多分ずっとミニマルだったんですよね。リフ一発だけみたいな。今のアレンジはアルペジオのフレーズから入るんですけど、あれを入れたのは、三人になってからかな。ずっと一緒になっちゃうから、そこから展開つけて。三人だと、うわものない分、抑揚つけるのに工夫しないといけないから、あのアルペジオを入れたんです。大分変わりましたね。
●確かに、バンドバージョンを初めて聴いたときに、大分変わったなと思いました。
北:でも、もともと面白い変な曲だなと思ってたんで、その変さを失わずに今回の感じになってよかったなと思います。
●そうですね。弾き語りのリズムとバンドのリズムの両方の良さがあるなと思いました。
北:うん。リズム隊二人のパワーがやばい。

■仕立屋
●『仕立屋』も古いですよね。
北:この曲は多分1stCDR出るくらい前後にはもうあるんで。
●ずっとライブでやってましたもんね。
北:ずっとやってる。音源に入れるタイミングを逃し続けて、今じゃねえな今じゃなえな、って。
●『One Day Calypso』のセッションの感じにも入らないし、『Night Bazaar』の地獄ディスコの感じとも違うし。
北:そうそうそう。ようやく入ってよかったです。
●これが一番色んな人とやったバージョンを聴いた気がします。
北:そうですね。『仕立屋』はずっと色んな人とやってたわ。
●もっとも問い合わせの多い曲でした。この曲はなんて曲ですか?って。
北:ああ。おれもミシンの曲なんて曲ですか?ってよく聞かれた。
●私も聞いた覚えがあります(笑)
北:歌詞そのまんまなんですけどね(笑)