a flood of circle『GOLDEN TIME』インタビュー
INTERVIEW[2014.12.12]
●4曲目『STARS』
佐々木:これ、実はリード曲になると思ってませんでした。これもギリギリで作ってたから(笑)。この曲は俺の中ではド真ん中の系譜なんです。ちゃんとブルースロックのルーツがあるリフが入っていて、でも歌が真ん中にいて、サビがちゃんとサビとして存在してる。日本語ロックの王道がちゃんと詰まってる曲。逆に言うとそういうド真ん中の曲を書こうと思うと結構難しくなってて。今まで書いてきた曲と似てくるっていう。昔の曲で言うと『ロシナンテ』とか、あれ高校生の時に作った曲なんですけど、自分の一番ルーツっぽい所から始まってる曲なんです。…だから結構悩んだんですよ、どこに落として良いのか、曲のテーマとかも探ってたし。で、敢えて歌詞から作んないっていう(笑)自分で設けたハードルもあったから、自分で八方塞がりにしてて。これはDuranの存在が大きかったかな。なんかこう、自分の中で一つのキーワードにしてるブルースとかロックンロールのリフを落とし込むっていう所を任せて良い奴が現れたから。まあリフは結局自分で考えたんですけど、ソロとかギターの一番美味しいところはギターヒーローが入ってきたからヒーローに任せておけばいいかみたいな(笑)。だから俺も勝手にヒーロー気分で「I’m A Star」って書けちゃってる。アホですよね!あはは(笑)。
●(笑)。あと、資料には解散の危機とかも書いてあったけど。
佐々木:ああ、それはナベちゃんとのバトルですね。この曲のドラムはむしろ、ナベちゃんの得意なタイプの曲だと思うんですけど、他の『Rodeo Drive』とか『Golden Time』とかツービートの難しい曲を演ってた時期だったんで。やっぱ悩んだんですよね、俺もはっぱかけてたし。で、2人で話してる内に言葉の綾でぶつかっていくじゃないですか?言わなくてもいい事お互い言い始めたりするから(苦笑)。ナベちゃんも言うつもりじゃないのに「出来ないから」って言い始めちゃったり、俺も「じゃあやるなよ」みたいな。男子同士だからそれはやっぱあるんですよ。その話をしてた後に、結局、心のどっかでお互いもうこいつとしか出来ないよって思ってるし、俺もナベちゃんがフラッドだからって本当に思ってるから。ナベちゃんに何かを押し付けてるっていうわけじゃなくて、そこにアイデンティティを感じてるからお前とやってんじゃんっていうのがあるから。やっぱり最終的にはやろうぜってなるんですけど。うん。それがあるから…「1000の夜」って三年間っていう意味なんですけど、夜の向こうに連れ出すのは、俺にとってはお客さんもだし、周りの人もだし、メンバーもなんですよね。俺にとってはナベちゃんとやろうぜってなったからには……あまりにも青臭いですけど、俺がド真ん中に居て、皆をちゃんと連れて行くんだっていう所信表明をちゃんとしておきたかった。で、さっきの自分の中でど真ん中の曲を書こうと思ったときに何を書くべきかすぐ分かったんですよ。連れて行くって事を言わなきゃいけない。そん時に俺は何なのかと思ったら(笑)ロックンロールスターで居るしかないって。恥ずかしい所にたどり着いたけど、それはもう、恥ずかしいと思わなくても良くなった感じがあって。何でかって言うと、本物のスターの先輩達と対バンしてきたし、まあリアム・ギャラガーの前座もしたし、と思ったら、もう傘の下にいる必要も無いと言うか、傘を出てずぶ濡れで良いんじゃないかと思ってるから。そういう宣言を、覚悟決めてバンドやってるんだから言っちゃえよって。そういうところを見て見ぬ振りしないほうがいいって、もし毒や愛に色が付いていたらって例えばなんですけど、自分の覚悟とか気持ちがポンと目の前にあったら本当に見失わなかったのかなとか、見えなくても持ってるもんで良いんじゃないかって。やっぱバンドはずっとあるから。目に見えてなくても、気合は音で表現できるんじゃないかなって。そういう感じかなって。
●はい。確かに1000の夜ごとには分かります。三年ごとに大きな転換があって。今回全体的に「フラッドを唄ってる」って感じがしますね。
佐々木:そうですね。やっぱりバンドをやってるって事は自分の人生と同じことなんだって、身に染み付きまくってるし、それが出ちゃうしそれを唄いたくなるんじゃないかな。曲を作るときに今回特にライブで演るっていう意識が強くあったから、全県ツアー終わった後だし、Duran入ってツアーやるって思ってたから。ライブで何を伝えたいかなって思う部分が出ちゃってるんだと思います。だから『STARS』はそれを象徴してるのかな。だからリード曲になったんだと思いますし。後から思えば。昔はこんなど真ん中の曲はリードに出来なかったから。もっと飛び道具的な曲が多かったし(笑)。
●はい、あと、頭からここまで「暗闇」とか「闇」とか結構出てきますけど、佐々木君大丈夫かなって。
佐々木:わははは(笑)。
●病んでないかなって(笑)。
佐々木:(笑)でも、それでいいのかなって思ってるんですよ…ここまで、暗闇だけを選び続けてきたから、そろそろ明るい「Golden Time」迎えたいんですけど(笑)っていうのがやっぱあって。それは、自分のバンド人生としてもそうだし、なんて言うか…全国回ってきて、俺は日本全体的にあんまり良い様に回ってないんじゃないかと思うことが多いし、俺が身近で「この人は本物だ」って思う先輩達も希望の歌を唄ってる風潮が今ある気がしていて。だから今自虐的になるよりは、うん、何か、ここまでそうだったかも知れないけど、ここから明るい未来が待ってるよっていう感覚。待ってるように作ってこうぜっていう気持ち。口にするとちょっと馬鹿馬鹿しいかも知れないけど、本当にそう思ってて。単純にこの先良い未来が待ってなきゃ嘘だろ!って。東北ライブハウス大作戦で見たりとか、中津川 THE SOLAR BUDOKANやってる人達とかと一緒に話したりすると同じ社会をバンドマンとして生きているわけだから、希望の感覚が強くなってるんですよ。だから…暗闇だけを選び続けてたって、ちゃんと「過去形」に出来てるのが自分の中で大事で。で、次の夜って何なのかなって時に、明るい風にしたいなって。

●『ホットチョコレート』
佐々木:これめっちゃ気に入ってるんですよ。俺、これを評価されたいんですけど、結構(笑)。
●すっげー可愛い、良い曲です(笑)。これは鍵盤は?
佐々木:山本健太さんです。元オトナモードの。元々はユニゾン(スクエアガーデン)の斎藤さんがソロで弾き語りやるときにギターがU&DESIGNの綾部さんで、鍵盤が健太さんのトリオだったんですよ。で、ランクヘッドの「みかん祭」だったかな?そこで知り合って。健太さん爽やかなのに内面が結構エグいんで、俺そこが凄い好きで。
●(笑)ちょっと、それ大丈夫かな、書いて。
佐々木:書いて大丈夫(笑)。凄い熱い人なんで、前から何か一緒に演りたいねって言ってて、やっとこのタイミングで。ちょっと『Party!!!』でも弾いてもらってるんですけど、鍵盤を入れたいねって話をしてて、ディレクターと俺のスピッツ好きが炸裂しちゃって、ここはキラキラした鍵盤でしょ、って。ワルツになる所があるんですけど、そこに入れたいってなって、健太さん呼んだっていう流れです。あ、健太さんのエグい話も初めてしました(笑)。あはは(笑)。
●(笑)この曲は、もうイメージがあって作った感じ?
佐々木:でもこれは一番天然で思いついてる系かな~。何も狙ってなくて。俺結構『オーロラソング』とか、あれ系は多分普通に生きてれば出来るんですよ。あんまり考えてなくても出来るタイプのやつで。これは作ったのが12月とかで、アルバムの為にとかじゃなくて、スッゴイ寒かったんですよ、楽屋が。そこで出来ちゃったんですよね。あ、これはもう曲になるなって分かってて。デモの段階でもレコーディングする段階に近いヤツ、唯一レコーディングの段階に近いデモだったかも(笑)。一番長く面倒見てくれてるマネージャーがここに来て一番コレが好きとか言ってるって噂が(笑)。
●(笑)。歌詞がロマンティックなのにリアルな感じが良いですね。ちゃんと現実に落とし込んでる感じが。
佐々木:ああ、嬉しいですね。めっちゃリアルな話して良いですか?このホットチョコレートって言葉自体はポンって出てきたんですけど、何となくそれで思い出した事があって、凄い昔にある女の子の話を聞いたことがあって、朝起きたら、デッカイM&M’Sの袋がヒーターの上かなんかに置いてて、全部溶けてたんだよねって話をしてて(笑)、何てアホな子なんだろうって。それが印象深くて(笑)。『STARS』とか『Golden Time』は覚悟を表現する場所だと思ってるんですけど、ロックンロールやブルースでもう一つ大事な事は普段生きてて見逃しそうなどーでもいい事を歌にしておくっていう。それが大事だと思ってて。でないとあまりにも合理的じゃないかと思うんですよ、歌が。何かこういう目的意識があってこういう売り方をしたくてこういう見せ方をしたいから曲を作るとか、だけじゃないハズで、ポロって出てくる歌って凄い大事で。それ面白いねって思ったりとか普段のどうでもいいエピソードをちゃんとメロディにしたり曲にしたりするって。本当音楽とかアートの役割ってそこなんじゃないかなって。普段こう…忘れそうな事?情報化社会どうこうって言うけど、情報になんないような(笑)どうでも良いエピソードにスポットを当てるっていう、それを表現しておかないと、目的意識の曲ばっかになんのが凄く嫌で。だから『ホットチョコレート』とかはそこからはみ出てる歌なんですよ、だから良いんだと思います。
●確かにそういうところがバンドの人格が見えるところでもあるし。
佐々木:例えば恋人との関係とか、俺が思うのって、一緒にこういうイベントを過ごしたね、とかじゃなくて何か変なクセあったなとか、そういう事の方が印象深かったり愛しくなったりすると思うんですけど。だからこの曲はフラッドのそーいうトコです(笑)。

●6曲目『Cigarette Roll』、これもおりゃあって感じの。
佐々木:おりゃあ、そーかもしんないです。でもこれも結構どーでも良いこと書いてる感じかも(笑)。こっから後半って感じかな、作ったのも後だったし。これは、テーマ的にはリードっぽい曲が出揃ってたから、もうちょっと肩肘張ってない自然体のロックンロールを作りたくて、だから歌詞の内容的には『ホットチョコレート』と似たような感じで延長線上にあるんですけど。曲自体はもうちょっと、こう、まあ8~9年バンドやってきたから大人っぽい事を(笑)。コードワークとかはストレートなロックンロールというよりは…ブルースってロックンロールに行くとどんどんシンプルになっていくんですけど、もっとジャズっぽい解釈というか、結構複雑なコードワークを選んではいますね。その中で今までやってないコードとか、姐さんのベースもエロくして欲しいってリクエストして、Duranにもそれを頼んでて。で、ナベちゃんにはドカドカっていうシンプルなヤツ頼んで(笑)。
●テーマはエロっていう(笑)。
佐々木:テーマはエロでしたね、自分の中では。『ホットチョコレート』は朝なんで、その前の晩って感じなんですよ(笑)。これも初めて言ったかも知んない(笑)。
●あはは。確かに同じ関係性の違う面みたいな。
佐々木:『ホットチョコレート』が朝で爽やか過ぎたんで、ちょっと夜の方も書いておこうかなって。俺はタバコ吸わないんで、タバコの味が分かるのは口移しの時だけっていう。エロく無いと分からない。そういう感じです(笑)。
●言い回しとか、ちょっと色っぽいわって思いました(笑)。あと結構あっけらかんとした所があるのに展開とか面白いなって。
佐々木:曲としても結構面白い事やってるんです。リズムも面白いシャッフルになってると思いますね。最近ライブで演ってて馴染んできて、Duranのギターがめっちゃ良いんですよ。良いエロさが出てて。Duranってギターもアンプもフェンダーで、正にフェンダー命なんですけど、この曲はフェンダーという楽器の良さが凄い出てる、すっげぇ良い音で録れてる。これは俺が絶対弾けないギターなんでデュランが入んなかったら出来なかったと思います。聴き所です。

●7曲目は『Black Eye Blues』。
佐々木:この間、日芸の学祭で初めて演った時ビックリするぐらいお客さんが盛り上がってくれたんですよね。まさかあんなになるとは思ってなかった。この曲はもうそのまんまですね。歌詞がそのまんまです。バンドワゴンに乗ってる時の。この取材やる前に大阪から帰って来たんですけど、機材車の中で色々ツアーの事考えてて、あれ?今考えてた事まんま『Black Eye Blues』だなって、思いながら。本当にこれはツアーバンドの歌です。前までだったら先に歌詞を書いてたんですけど、今回は曲から作りました。カッコイイリフがあって、でっかいコーラスがあって、もうスタジアムでも演奏できそうなデカさが欲しいと思って。それは野音があってからなんですけど。トーキングブルースを作るときに、ワーッと物を言いまくるだけでおしまいになってた処があったと思うんで、ちゃんとそれを言いつつ、巻き込むみたいな表現にしたいなって思ってたから、ビートもでっかく、コーラスもでっかく、リフもでっかく、みたいなイメージがあったんです。今までだったら、この曲サビをビート早くしたりとかやってたと思うんですけど、もうでっかいまま終わってたりしてて、それは自分の中でテーマとしてあったんで。アルバム出す前のライブで初めて演奏して皆がコーラスしてくれてたんで、これはもう勝ったなと思いました(笑)。
●この国のブルースを溜め込んでるって、やっぱり全県やったバンドだからこそ重みがあると思います。
佐々木:あー、嬉しいです。ブルースの一番良い所って憂鬱を溜め込んでも溜め込んでも、歌にして吐き出したり、皆で共有できたら急にポジティブになっちゃうっていう、音楽自体がそういう物だと思うけど、特にブルースはその側面が強いと思うんですね、憂鬱から始まった分だけ。

●8曲目『Rodeo Drive』
佐々木:これもナベちゃん殺しの(笑)。これはね、ナベちゃん凄く良いなと思ったのはダンスビートとツービートを要求した時に、アイツも強がりだから「叩けません」とは絶対言わないんですよ。一応それ面白くないからこんなんどう?って全然違う物出してくるんですよ。この曲は大当たりが来て。ダンスビートのスネアの位置を外し始めて、最初叩けてないのかなって思ったんですけど、そうじゃなくてナベちゃんのクリエイティビティなビートに対して凄い真面目に考えてる所から出てるんで凄い嬉しかったですね。まあロデオってテーマが決まってたんで、しかも、ロデオ乗るほうの視点じゃなくて、乗られてる方の牛目線で作ろうと思ってたから、良い感じに動物的なビート、テーマとバッチリはまったビートを叩いてくれたので、それはナベちゃんありがとうっていう。あと、「サンチャゴの海」ってあるんですけど、サンチャゴって海が無い街なんですよ。
●あーそうなんだ。ちなみに何処ですか?
佐々木:チリだったかな。埼玉県とかみたいに海に面してない街で。俺のイメージではサンチャゴにある、ロデオされてる牛が、海があると思い込んでる、それぐらい見えて無いんだけど、でもとにかくこれだけは嫌だって思ってる。ここに居るのだけが間違いで後は何が正解か分かってないけど、とにかくここに居るのが間違いだって事が分かるかどうかが大事っていう。俺の人生こんなもんだなって思ってると暴れらんないんじゃないかなって話(笑)。うん。だって動物はあそこで死ぬって思ってないじゃないですか。そういう感じが書きたかったんです。サンチャゴには海は無いって事だけは言っておきます(笑)。