tobaccojuice おおくぼひでたか インタビュー
INTERVIEW[2015.03.18]
●再開してからは前とバンドの雰囲気が違うとかはなかったんですか?
お:あ、でも明るくなったから良かった。人もそうだけど。まぁ敏将とかは変わんないけど(笑)。広介のドラムのことが大きいと思うけど、音が明るくなったなと思って。
●そうですよね。再開後のツアーも楽しい感じでしたよね。だからこそ、このアルバムが出てきたことがまた驚きでもあり。
お:(笑)
●これがtobaccojuiceの不思議なところで。休止前の『どこまでも行けるさ』は振り切れた明るいアルバムで、復活したところで今回の『一輪の花と二つの三日月』のダークな感じがくるっていう。
お:(笑)。まぁ『どこまでも行けるさ』はメジャーと契約がある中で作ってたっていうのもあって、最後のアルバムっていうのもあったし、みんなの隠し持ってたルーツを出してやり切った方がいいんじゃない?って話になって。広介とかハイスタとか好きだし、そういうのを出していこうって。ライブで明るい方が楽しいっていうのもあったし。
●今作は作る前の構想はどんなものだったんですか?
お:新曲ばっかりでもいいんだけど、出せてない曲が結構あって、毎回アルバム作る度に「あの曲どうする?」ってなってたから、もう今回入れないんだったら今後一切やらないみたいな風にして、新しいのだけにするならそうしてっていう話をして。でも敏将は「今思っていることを歌いたい」って言ってて、そういうのって言われてみればそうかと思うけど俺はわからなかったから、今ある曲でいい曲を出せばいいじゃんって思ってたんだけど。それで昔のは敏将の思ってる感じが今の気持ちとリンクしているものを集めた。ただ『地獄音頭』はライブでやると一番人気があって、それをバンドメンバーが何であの曲が人気があるかわかってなかったから(笑)。
●無条件にテンションのあがる楽曲なんですよね(笑)。結果、完全な新曲は『アメリカ』『スケープゴート』『冒険家』の3曲ですね?
お:そう、完全に新しいのは3曲。
●その3曲はおおくぼさんの曲ではないんですよね?
お:そうだね。
●『アメリカ』が復帰後、最初に聴いた新曲だったと思うんですけど、tobaccojuiceの延長線上にあるものだけど、ちょっと違うところだなって思ったんですよね。
お:『アメリカ』と『スケープゴート』は岡田の曲だしね。
●はい、それが今思えば岡田さんが書いているってこともあったんだなと。
お:そうだね。『アメリカ』って曲はクンビアっていうリズムを使っているんだけど、広介がずっと「tobaccojuiceはクンビアをやった方がいい」って言っていて。それのリズムトラックだけが送られてきていて、岡田がコードを乗せて、それが俺のところにきてって流れだったんだけど。これってどっちもドマイナーなの。なかなかドマイナーで曲って作るの怖くてさ。tobaccojuiceでドマイナーな曲ってなくて。『アメリカ』って『2号線』とコード進行はほぼ一緒なんだけど、『2号線』はマイナーセブンで。そこにセブンを入れないか!?って。
●(笑)
お:でも岡田はベーシストだからさ、あんまり関係ないっていうか、俺がマイナーセブンにすれば良かったのかもしれないけど。
●おおくぼさんにとっても新鮮なことだったんですね。自分ではやらないであろうことというか。
お:tobaccojuiceと言えば、メジャーセブンかマイナーセブンって感じだったから、よくやるね!ドマイナーをって(笑)。
●(笑)。クンビアのことを調べてたら、ちょっとださくてかっこいいみたいなものだってあって。
お:だからベースのラインとかももっと最初はいなたい感じだったんだけど、最後の最後でいじったんだよね。本当はもっとクンビアのベースパターンだったんだけど、エンジニアの人が「冴えないね」って言って、弾き直したの。だから本当のクンビアではないし、わりとミックスされて良くなったんだよね。
●その3曲以外の昔の曲はおおくぼさんの作ったものですか?
お:俺と敏将って感じかな。広介が入る前のもあったり。一番古いのは『びっくりブルース』かな。『パーティーブルース』とかの頃。
●その『びっくりブルース』も顕著なんですけど、おおくぼさんのギターの音が今回重要だったんじゃないかなと思っていて。
お:あぁ、そうそう。そうなんですよね。とにかく、ギターを弾く時間がないから、最小限に得意なことだけをやろうと思って。今までって時間の余裕もあるし、こういうこともやりたいなとか思ってたんだけど、今回はバンドの4人だけで作るし、自分の出来る最大限のかっこいいことをやろうって。だから結構ロックっぽくなったよね。
●はい。1曲目『びっくりブルース』のイントロのギターの音で、今回はこういうアルバムなんだなって分かるというか、グッと入り込める音だなと思いました。
お:しかもその真田さんって人が俺と趣味が近いというか、レッド・ツェッペリンとかビートルズとか、とにかくギターロックが好きな人で。今はジャズの仕事ばっかりしてるんだけど。
●ニューヨークにいらっしゃるんですよね?
お:そう。この人と仕事をし始めてから、ギターの重要性に気づいたっていうか。
●真田さんとは前は何の作品で一緒でしたかね?
お:『ヘッドフォンゴースト』と『ゆめのうた』。ギターはギターの仕事しないと怒られるんだよね。でもこっちは弾かない方がかっこいいと思ってたから、えぇ?とか思ってたんだけど、真田さんとやることで刺激されて。ブルースロックギターみたいの昔はかっこ悪いと思ってたんだけど、やっぱり得意なことやると楽なんですよ(笑)。気持ちいいしね。
●今回はリズムがかなり重要なアルバムですし、松本さんのリーディングも強烈ですし、それぞれの個性、得意なものがばしっと出たアルバムだなと思ったんですよね。
お:そうかもね。自分の出来る最大限のことをやったような気がする。特に新しい曲はリズムから作ってるから、余計にね。
●おおくぼさんはご自身の曲で、今回は絶対に入れておきたいってものはなかったんですか?
お:俺はもう『地獄音頭』だけ、毎回アルバムにいつ入れるんだって言われるから、そのためだけにこのアルバムを作ったといっても過言ではない(笑)。
●(笑)。確かに毎回このアルバムには『地獄音頭』は色が合わないみたいな話になっていましたもんね。そういう意味では今回のアルバムは『地獄音頭』に自然と辿り着けますよね。それから、今作もおおくぼさんが手がけているジャケットについてお伺いしたいのですが、今回は盤面もそうですし、かなり細かく色んな箇所に絵を描かれていますよね。どんなものにしようと思っていたんですか?
お:レコーディングが合宿でベーシックを5日間やって、ご飯とかもシェフが作ってくれたり、終わった後に飲んだりとかしていて。
●いい環境だったんですね。
お:そう。入り込めたから凄い良くて。で、ギター弾いてない時間とかにプレイバックとかを聴きながらちょこちょこ描いて。音がどうなっていくか感じながら描くってなかなか出来ないじゃん。実際あんまりそこで描いてたもので使ったものはないんだけど、久しぶりに作っている音源聴いて感じて描くっていうのが出来たから楽しかった。歌詞の世界とか、特にヤギ人間のやつあるでしょ?
●『スケープゴート』ですね。
お:それが主にジャケットデザインのイメージになってて、あと合宿中にタイトルずっと悩んでたんだけど、敏将が最後になってこれって言って、メールで凄い長い文章で理由が送られてきたの。その中に色んなものがあって、子供とか蝶とか。それもイメージに入れながら描いて。
●今回のアルバムが完成してみていかがですか?
お:よく言ってるけど、一番いいやつが出来たと思うよ。ツェッペリンとかビートルズとかキャロル・キングとかしか家で聴かないけど、そういうのと同じ感じで聴けるからさ。エンジニアさんの力も大きいしね。
●真田さんとやれたことも大きかったのかなと。
お:本当にそう。とにかく4人だけで作るのはやめようって言った。そういう意見もあったけど、おれは第三者が誰かいた方がいいって。だから真田さん込みで5人で作った感じ。
●最後に、ここから先のtobaccojuiceについてを聞かせて下さい。
お:もうお客さんのために、お客さんのためだけのバンド、だと思う。少なからず待ってくれてるって気持ちだけは感じてるから、それをいかに裏切らず、続けられるかって。
●どうしてそんな気持ちになったんですか?
お:いや、こんなほわほわやってるのに、バンドが出来るってなかなか凄いなって思って。当たり前だけど、お客さんあってのものだし、個人の都合でやりたくないとか、もっとやろうとかっていうのは、本当は思うところはあるけど…なるべく息が長くいられれば。理想は。続けたいっていうか、出来たらいいなって。最後に締まらない答えだけど(笑)。
●そうですね(笑)。
お:個人の考えとはちょっと違うのかもしれない。バンドって。
●tobaccojuiceってものが自分のものだけじゃないってことですよね?
お:そうそう。人様のものにちゃんとなっている気がするから、そういう人達のためにもやらなくちゃいけないなって。でもそれぞれに人生があるから。4人で合致して、俺達武道館目指そうってバンドじゃないからね。
●そうですね。長年積み重ねてきたバンドですからね。でもそのやっている人達の人生が音楽になっていくと思うので、それでいいんだと思います。10代の子のための音楽ではないかもしれないけど、tobaccojuiceの音楽が必要な人達は絶対にいるわけで。
お:そうあって欲しいですね。
●いや、必要ですよ。
お:自分にとって必要な音楽って、年とってくると段々減ってくるじゃない?
●そうなんですよね。
お:だから、そういう人達がいる限りはやれたらいいかなって。
●はい、ありがとうございました。