tobaccojuice 松本敏将 インタビュー
INTERVIEW[2015.03.18]
●同じく新曲の『スケープゴート』についても伺いたいのですが、これは9分の大作ですね。
松:作ろうと思って作れる曲じゃないって後から聞くと思うね。出来ちゃったみたいな。
●これも岡田さんが持ってきたものから始まっているんですか?
松:そうそう。広介君がアフリカのリズムに凄く興味を持ってて「tobaccojuiceでやりたい」って言ってて、アフリカのビートにおかぴーが持ってきたコードをのせることになった。それにどんな歌を乗せればいいのかなって思っていて、間の手みたいなフレーズ入れるか、ポエトリーリーディングみたいのがいいのかなっていう構想はあって。でもバンドでいろいろセッションしてゆくうちにどーんとしたレゲエのアレンジが生まれて、もともとアフリカっぽいはやいビートに乗せるつもりだったポエトリーリーディングの感じがうまくはまって、こういうのやってる人があんまりいないなと思って、これが面白いんじゃないかなってなった。
●歌詞に関しては?
松:実際に経験したことに基づいて、凄くショッキングだったから携帯に書いたりしていて。友達にも相談したりもしていたから、そういう中でのやり取りも含めて、曲に鮮明に落とし込むっていう作業をやった感じ。
●松本さんは最近はどんな風に曲を作っているんですか?今回のこの2曲は言葉数もとても多く、強い印象を残す曲ですが、歌詞が先に出来たりはないですか?
松:思いついたこととか携帯にメモしたりするけど、やっぱり音と歌詞が同時というか、そこの混じりが好きでやってるから、言葉だけでも成り立たないし、音だけでも成り立たない。言葉と音が重なって、初めて一つの見たことないものとか、あの描きたかったムードとかが出るのが好きで。自分の中にある小さい時に見た光景の雰囲気とか、今でも時々あるハッとするような時とか、電車に乗っている時にふと思い出す人のこととか、そういうのって言葉と音で表すと、ぱーんと人に伝えられる気がしてて。その感覚を誰かに伝えたいっていうのがあるので、明確にメッセージとして言葉にできないものだけど、その感覚を表現する時は、俺にとっては言葉と音が同時にあるもので。だからね、どっちから生まれるっていうよりは、こねくり回す…いや違うな…歌うって感じ(笑)。
●(笑)。元々松本さんの中に経験としてあるものだけど、その岡田さんの最初のアイデアがあり、脇山さんのアイデアがあり、そうやってみんなのものが重なっていく中で、その感覚を表現出来るものが気持ちよくはまるんですものね。
松:そうだね、そうなったね。
●そのソロで弾き語りで歌うこととtobaccojuiceで歌うことと分けてたりはするのですか?
松:分けようとしたこともあったけど、無理。結局分けて出来ないかなぁ。
●松本さんの音楽の形っていうのが大きなものなんでしょうね。
松:それぞれの持ち味っていうのはあるから、そこは考えるけど、ここではこれでここではこれでっていうのは出来ない。
●今作は昔の楽曲も多いですが、歌詞を変えたりはしましたか?
松:歌詞はほとんど変えてないかな。録音してない曲って結構あって、でも今回選んだのは凄く好きな曲だから。好きな曲って飽きない。全然新鮮だし、それを録れることの喜びの方が大きかった。自分の中にどすんとあるものしか入れてない。
●最後に入っている『冒険家』は松本さんの楽曲ですよね。
松:そうそう。とにかく活動休止前からの流れもあるし、なんとなく暗いアルバムになるなと思っていて。でもそんなに最後救いがないのは良くないなと思って、これに関しては完全にこのアルバムを締めるエンディングとして作った。全然他の曲が出来る前に。作りながら、次のアルバムの最後の曲だと思ってた。
●かなり前の段階で、予感がしていてってことですね。
松:そう。歌詞はそんなに明るくはないんだけどね。『スケープゴート』は聞く人によっては怖くなっちゃうかもしれないけど、作品を作る上でどの曲も光はちゃんと描いてるつもり。それをアルバム通しても、分かり易く表現してみたかった。
●tobaccojuiceの楽曲ってどちらか一方ってことはないですよね。ただ楽しいだけとか、ただ悲しいだけとか。いつもその裏側があるから好きなんですよね。それはもう自然とそうなるって感じですか?
松:自然。っていうか、それしか出来ないんだね。
●松本さんは計算みたいなのはあまりないんですかね?
松:唯一の計算がこの最後の曲が欲しいなって、気持ちを込めて書いた感じだね。計算は…出来る人にやらせればね(笑)。
●(笑)。松本さんって最初にも言いましたけど、自然体というかフラットなんですよね。4人の中でも一番、そのままでいるというか。休止とか再開とかにも流されてないし。
松:あぁ。それは俺が楽しいところにいないと、みんな例えばどっか行った時とか、それはtobaccojuiceだけじゃないんだけど、中学とか高校の友達とかも、俺がここにいないと、帰ってくる場所がないじゃん。そこは俺の場所であるから、いつでも帰っておいでっていうのはあるよ。
●それって凄く大きな話ですね。
松:これしか出来ないから、仕方ないよね。
●凄く男っぽいのかもしれないですね。ホームであるってことですものね。
松:まぁあっちからしたら、ただの遊び場だけどね。だけど、大切じゃん。
●はい。だってそういう人がいてくれたら、安心じゃないですか。それは凄いことだと思います。今回のアルバムタイトル『一輪の花と二つの三日月』は松本さんが決めたと伺いましたが、どんなものが込められているんですか?
松:結構悩んだんだけど、まず月ってイメージがしていて、夜の曲が多いから。休止してから一人の間、新月とか満月とか人のバイオリズムと月って関係しているなって感じていて。このアルバムは満月の満ち足りている感じではなくて、三日月だなって思ってたんだけど、三日月ってタイトルはよくあるし、このアルバムってよくある感じじゃないから。で、そんなことを思いながら散歩してたら、蝶々が二羽飛んでて、振り返ったら、小学校2、3年生位の女の子が二人並んで、後ろ姿で本当に双子みたいに自販機で手を伸ばしてジュースを買おうとしてたの。ちょうどその時に三日月のこと考えてたから、あぁ二つの三日月、こればっちり来たなと思って。それでまた曲を聴いたりしていて、曲に出てくるイメージとして一輪の花っていうのがあって、そもそも俺の根本的な心の深いところの景色に一輪の花っていうのがあるなって、そこでようやく『一輪の花と二つの三日月』っていうのが完成した。で、これを持っていったら、広介くんとおおくぼくんが、村上春樹の『1Q84』の中で二つの月っていうのがあるから、「これ言われるよ」って言うので、すぐ図書館行って読んで(笑)。
●真面目(笑)。
松:それで二つの月が出てくるシーンを読んだけど、何も問題を感じなくて。そこでやっと全部クリアして、みんなにも「読んだけど問題なかったよ」って。
●久しぶりのアルバムを作り上げてツアーも終わったところですが、今tobaccojuiceはどんな感じですか?
松:それぞれ活動の拠点、ベースは変わってきてるけど、一つ結束してる場所っていうのがあって。このアルバムがtobaccojuiceらしい、いいものが出来たっていうことは間違いなくみんな信じている。個人的な話で言うと、これを沢山の人に聞いてもらうために、ライブで伝えていきたいっていうのはある。そのための計画をメンバーで練ったんで、今年いっぱいはそれをやっていきたいなって。
●アルバムだけでももちろん伝わりますけど、このアルバムの曲をライブで聴いた時に、ライブで更に深みを増す楽曲だなと思ったので、是非ライブでやっていって欲しいですね。最初に聴いた時に、出会った頃の本当に初期のtobaccojuiceを思い出して。
松:そうだね。一周して最初の感じに戻ってる感は少しある。
●tobaccojuiceの根本にあるものが出ているし、色んな時期のtobaccojuiceがあってのアルバムだなとも思うし。
松:凄く頑張って作ったけど、ある意味頑張らないで作ったというか(笑)。こういう色にしようって言って、そうに出来たっていうのが、今回は作品を作るってことにおいて一歩踏み出したのかなと思う。バンドとして、そこは成長した気がする。
●これまでで一番かっこいいアルバムだと思うんですよ。
松:でも一番かっこつけてないんだけどね。
●そうだと思います。
松:それでかっこいいってことは、かっこいいバンドなんだね(笑)。
●そういうことです(笑)。ありがとうございました!
(文:小山裕美/ライブ写真:野田昌志)


『一輪の花と二つの三日月』
01. びっくりブルース
02. アメリカ
03. 地獄音頭
04. 猫
05. スケープゴート
06. 南の島移住計画
07. 冒険家

CD
PECF-3121 / 2,300円(税別)
2014.12.17発売
LIVE SCHEDULE
5/8(金) Zhar the ZOO 『GHOST TOWN BLUES』 
出演:tobaccojuice / 高橋徹也 
開場 19:00 開演 19:30 
前売 ¥2,800 当日 ¥3,200 
☆チケット:e+・ローソン・Zher the ZOO店頭売り:発売中

6月、8月、10月、スタパにて2マン企画『二つの三日月』開催
☆詳細は後日。震えて待て!


★詳しい情報はこちらへ。
■公式HP http://www.tobaccojuice.info/