●今作の『rucksack』はいつ頃から取りかかったのですか? 藤本:去年の秋頃から少しずつ録りだめしていった感じですね。僕ら何日間で全部録るとか、そういうのは苦手で。 山本:3曲ずつがっちり練習して固めて、を繰り返すみたいのしてたら、それが定着していった。 ●どういうアルバムを作ろうみたいなのはあったんですか? 藤本:毎回ないですね。デモ自体は最近ペース上がってきたので、わりとどんどん出来るんです。そこからいいものをやるっていうので、溜まってったものを形にして。 山本:曲数はいっぱいあったよね。色んなタイプの曲が倍とか、ちゃんと形になってないもの含めたら3倍とかあった。 藤本:まず「この曲がやりたい」っていうのがあって、それに対して「だったらこの曲を入れた方がいいよね」とかいう調整はあって。でもその「この曲」っていうのを選ぶのに、テーマがあるわけじゃなくて、単純に今やりたいっていうだけ。それのキーっぽい曲がどうやら『リュックサック』やったと聡君が。 全員:(笑) 山本:彼(藤本さん)はどれも自信たっぷりで持ってくるんで。それはそれで嬉しいんですけど。で、まず『イチカ&バチカ』をやるってなって。 ●この曲はシングルとして先にリリースされていますね。 藤本:『イチカ&バチカ』を大分前に作ってデモを送ってて。そんなに反応なかったのに、ある日突然メールで「あの曲めちゃくちゃいいな」ってきて。いや、結構前に聞いてもらってたのになって。 ●(笑)。 山本:もちろん聞いてたんですけど、凄く早いペースでデモを送ってくるので、気持ち的に前のアルバムをリリースしてツアーとかなると、そっちに集中しちゃうようなところがあって、それが終わった時だったと思うんですよ。多分ちょうど曲をどうしよっかなってタイミングだったんちゃうかな。 小川:ワンマンで新曲をどうしようって話をしていて。 ●昨年9月の京都でのワンマンですね。 夏音:せっかくワンマンやるし、新しいのやって次に繋げようっていうので、その1曲をどうしようかって考えてたんです。 ●藤本さん的には『イチカ&バチカ』は自信のある曲の中でも、ピンときてたものだったのですか? 藤本:ピンときてたけど、そういう話になった時には、ほとぼりは若干冷めてたから(笑)。 全員:(笑) 藤本:やっぱりどうしても直近のものに熱がこもるじゃないですか。作った時はいつもとんでもないもの出来たとか一人で浮かれてるんですけど、反応ないと寂しい思いをしますよね。 全員:(笑) ●この曲もそうですが、クーピーズの曲は展開にハッとさせられることが凄く多いです。 山本:あぁわかります。曲の展開をしたい人って大体失敗してるんですよね。ギミックが勝っちゃって。でもクーピーズを初めてみた時に面白いって思った一つは、ギミックが多いんだけど負けてないっていうか。彼が最初に曲をがーっと作った、そっちが強いから筋が通ってるっていうか、そのバランスが面白いなと思ってて。『イチカ&バチカ』とかは正にそうで。そういう昔から得意な部分といいサビのメロディーとかが一緒になってて、今までの色んな得意なポイントが集まっているなと思います。 ●そうしてまずは『イチカ&バチカ』が形になり。山本さんは、今回のアルバムの形が見えた曲は『リュックサック』だったのですね? 山本:僕はそうでしたね。みんなはわからないけど。あとルーツの良く分からん曲が出てきた時に凄いなって思うんですけど『ダイハード』が出てきた時に、めっちゃいいなと思った。その2曲ですね。 ●皆さんはいかがでしたか? 夏音:私も『イチカ&バチカ』と『リュックサック』。クーピーズってめっちゃ真剣なこと言ってるけど「なーんちゃって!テヘ(笑)」みたいなイメージがあって。 全員:(笑) 夏音:でもこの2曲に関しては「なーんちゃって」じゃないんやって。シリアスって言葉はちょっと違うんですけど、パキッとしたシュッとした感じで、2曲並んだ時に前回とは違うんだなって思いました。 小川:レコーディングを12、2、3、5月ってずっとやって、曲が揃ってきて、やっとこういう感じになるのかって見えてきた。俺はそれまでどういう感じになるのかが全然想像がつかないって感じやった。 山本:最初はそうだね。曲数あって凄く面白いしバラエティーに富んでるけどなぁだった。それが『リュックサック』が来た時に「頂きました!」って感じになった。 全員:(笑) ●私もライブなどでバラバラに聞いていた時は、次がどういうアルバムになるのかが想像つかなくて。クーピーズって不思議なバンドで、王道もあるけど斬新さもあるし、本当に曲によっても全然違うので、イメージや説明が難しいというか。 山本:僕はそれが凄く嬉しい。つかみどころがないけどかっこいいとか、説明出来ないけどかっこいいとかって、一番かっこいいと思っていて。それってアルバム一枚にどういう曲を入れるかで、凄くコントロールされちゃうじゃないですか。だから僕はアルバム作る時にそこを一番気にかけますね。どの曲もやりたいし、いいんですけど、どう見せるかによってえらい変わってしまうんで。 ●タイトルも山本さんが決めたとか? 山本:候補を持ってきてもらってですけど、好きなときはゴリ押しするんです。 夏音:ほんまにそうなんです。 全員:(笑) ●後からみると、アー写とかイラストとか全部含めてコンセプトっぽく見えますよね。 藤本:僕は個人的に『ラストチャンス』って曲が手応えあって。『リュックサック』とか『イチカ&バチカ』もどっちかっていうと決して明るい曲じゃないじゃないですか。でも自分的には本当はそっちなんですよね。今回はそれがど真ん中に来てる感じがあった。 ●今までもそういう曲はあったけど前に出てこなかったのか、それとも藤本さんが出せるようになったのか、どちらなんですか? 藤本:ニュアンスとしては当初から変わらない。「(笑)よりかは笑ってる場合じゃない」ってものばっかりなんで。『リュックサック』を作った時に凄くいいの出来たと思ったけど絶対受けへんって思ったんです。初見の人とかクーピーズ好きだって人でも、これはいいと思ってくれないと思ってたら「そんなことないやろ」って、うちのプロデューサー(山本さん)が言ってくれたんで。 ●(笑)。 山本:実際やってみて、お客さんの反応どうやった? 藤本:未だに唖然としてるんかなって俺は思ったりするけど。 小川:そんなことないよ。 ●唖然というよりはメッセージが凄く入ってくるので受け止める分、見終わった後にぼーっとしちゃう感じじゃないですかね。ここまでバンドをやってきて今“背負って行こう。連れて行こう。”って歌えるって凄いことだなと思います。 藤本:逃げたくても逃げれないって気づいたんで。前作の『テレパシー』じゃないですけど、過去をよしとして生きていくしかないでしょうって。 ●藤本さんが今まで歌ってきたキーワード、コンプレックスや嘘とか過去の自分とか…、そういうのを歌った上で、連れて行くっていうのが凄いなって。総括しているような感じはあったんですか? 藤本:何で作ろうと思ったかはもう覚えてないんですけど、そういうものはあったのかもしれませんね。作った時のこと覚えてないんですよね。きっかけになること、言葉とかはあるんです。音楽聞いてたりする時にふと思ったりするんですけど、作ってる最中にわからなくなっちゃうんですよね。 ●『リュックサック』はそのきっかけは覚えてます? 藤本:Aメロの語ってる部分がきっかけではあって、そこから考えていった感じですね。でも合間のダダダダダダとかが、何でこういう感じになったかがわからない。偶然の産物。僕は結構そこを大事にしたいところがあって、理屈っぽくなりたくないっていうか。うーん、わかんないっすね。 全員:(笑) 藤本:容量が少ないんで忘れちゃうんですよ。作って結構経ってから、この曲をやりましょうってなった時に、コード分からんし「宏実君、コード起こして」とかってなる。 ●あっ、そんなレベルで忘れちゃうんですね(笑)。 藤本:どうやって弾いてたか忘れちゃうんですよね。書き留めないんで。 ●その藤本さんが手応えがあったという『ラストチャンス』は、私も重要な曲だと思うので伺っておきたいのですが、これはどうやって出来た曲か覚えてますか? 藤本:曲調のイメージからきました。多分ライブの印象でワーッて歌っている印象あると思うんですけど、もっと優しく歌いたいみたいな。 全員:(笑) 藤本:声を張らなくても、メロディーとか曲で聞かせられる曲っていうのは、自分でも意識していて。こういうリズムの曲、ベースとドラムがメインでメロディーが凄くいいっていう曲をしたいっていうのがあったんです。言葉がどうしてこうなったかは… ●凄くいい歌詞ですよね。 藤本:色んなことを足してる感じで、バーって出た時に最後の“毎日が最後のチャンス”っていうフレーズが出て、まとまった!って感じですかね。こういう曲作りたかったんです。でも出来なかったんですけど。だから嬉しかったです。 山本:僕はデモを聞いた時に凄くいい曲だなと思ったんですけど、それ以上に来てしまったかっていう、恐れ多い方が大きかったです。 夏音:わかる! 山本:そういう音楽だったり、そういうリズム隊、ベーシストが凄く好きなので。そこに対しておいそれと踏んでいって痛い目にあってるバンドをいっぱい見てるし。 全員:(笑) 夏音:本当そうなんですよね。 山本:どうしても如実に出てしまうんで、覚悟のいる、胃が痛い曲でしたね。 藤本:今聞いてなるほどなって思いましたね。詳しいだけにそれに対する難しさを知ってるんでしょうね。僕は単純に好きなんで、そういうベースを弾いて欲しいっていうのがあったんで作ってみましたね。 山本:だからこれから演奏が良くなっていくと思います。 全員:(笑) ●ライブで聞くのが楽しみです。 小川:昨日宇都宮のライブで初めてやりました。 山本:ぶりっぶりに弾いてやった(笑)。 全員:(笑) 藤本:この曲はリハの時から本番も含めて、グッとこみ上げる瞬間があって。たまにあるんですよ、そういうの。『ゴールデンタイム』とかそうやったかなぁ。純粋に自分がグッと来れる曲やって、昨日ライブでやってみて手応えあったんで、この曲はツアー中もライブではやっていきたいなと思いました。