一色徳保『それでも、僕の足跡は続く』インタビュー
INTERVIEW[2015.10.07]
●はい、歌詞はそういう方向性で、サウンド的にはつばきじゃ無いような形で。
一色:うん、曲作ってアレンジして、どっちかなってなった時も、選ぶとしたらつばきっぽくない方っていう。
●徹底してるな(笑)。
一色:そうそう。こっちの方がつばきじゃないよねって(笑)。あえてつばきに寄せた曲もあるけど。曲がそれを求めてるんだったらね。どっちでも良いんだったら、つばきじゃない方。
●じゃない方(笑)。どんな物になるかな、とかコンセプト的には?
一色:コンセプト的にはまあ、今までやってこなかったアレンジを、っていうのもあるし。最後に作ったのは『表と裏』っていう曲で、10曲目、最後に弾き語りで入ってるんだけど。ソロアルバムだから自分一人で完結する。まあ大迫に弾いてもらってるけど、自分の歌と言葉で終わっても良いかなって。そう作ったりもしましたけどね。あとはよりキャッチーに、バンドを聴かない人にも聴いて貰える入り口のね(笑)。バンドマンのボーカルの人がソロアルバム作りました、ってなると、まあ、何パターンかあるじゃない?こう、アコースティックで弾き語りのアルバムですよ、とか。そういうのって結局そのバンドのファンの人しか聴かないし、基本は。一発目だし、そういうのはやめようと思って。とにかくつばきを知って貰いたいから攻めで。
●戦略的に!
一色:そう、本当に全力でやったよ。新人の気持ちでやったね。これなら引っかかりあるでしょ、って。売れるんじゃない?って匂わすぐらいの(笑)。ポップに、キャッチーになれば良いなと。まあ、つばきも十分ポップなんだけど。
●凄いの来たなって思ったけど全力なら当たり前ですね。
一色:そう。自分じゃ絶対やれなかった『暮らしてた街』とかエレクトロな打ち込みのアレンジになってるし、『グレイプ』とかシャッフルなんてつばきではやったことなかったし。それを一緒にやってもらって、全然違う方向に持っていくのは楽しかったし良かったと思う。
●やっぱり自分だけで完結しない作業は楽しいですか。
一色:楽しいし、勿論嫌なところもあるよ。嫌なところって言うかちょっと違うなって思ったら普通に言うし。めんどくさい処でもあるし、楽な処でもあるかも。つばきだったらもうあんまり言わないっていうか、15年もやってるから「一色これ嫌いだよな」って分かってるし。それは楽なんだけど、全然違う事はやれなくなっていくのもあるから。

●では一曲ずつコメントを。『朝が来るまで』
一色:これは、元々はつばきで演ろうとしてたの。ここに出てるのは俺の頭の中ではサビなんだけど、Aメロからずっとあって、フル尺であった曲だったの。元々こういう浮遊感のある曲で、これをつばきで形にするのは難しそうだなと思って。このトラックは小佐井君が全部打ち込みで作ったんだけど、なんとなく俺もこの曲は打ち込みでこういうイメージだったし、となるとさ、メンバーすること無いじゃん。
●ああ、なるほど(笑)。
一色:バンドでやるっていう感じじゃないなって思って。それでしばらく置いておいた曲なんだけど実はAメロとかBメロとかあった曲で、レコーディングの終盤に小佐井君と2人で話してる時に「何かワンフレーズみたいなので、一個インストみたいなやつ作りたいよね」っていう話になってこの曲のことを思い出してサビのメロディと歌詞だけ小佐井君に投げて。そしたらこれ作ってきて。…これ、手術して終わったあとに、ベッドの上で目覚めていくイメージで作りましたって言ってたよ。
●おー、そう言われてどうでした?
一色:へぇー、そうなんだ?って言いました。へぇーって(笑)。そっかそっかって。
●(笑)。

●『悪い冗談』
一色:これは、ソロ用に作ったかな…いや、普通に作ってて、大迫に家に来てもらって、ちょっとギター入れてみてくんない?ってギター入れてもらって。これアレンジ(のクレジット)が2人になってるのは、元からそんなに変わってないと言うか。根本的なところが結構残ってて。プラスアルファでリアレンジしてもらったくらいで。だから大迫のギターの感じが残ってる。
●ああ。
一色:これはその後、何となくソロでやろうかなって思って、いい加減に歌詞は書こうかなって、あんまり真面目になり過ぎないように。
●弾けてるって言うか。
一色:そう。これは色んな仕掛けがあって、初めて聴いた時俺もびっくりしたんだけど、左右で違うとか、気持ち悪!って思わなかった?最初?
●あ、最初は「え?」って思って聴き直したかな。
一色:俺え?何コレ?って思った。これ何?歌詞が聴こえねぇな、なんでだろう?と思ったら、左右から違う言葉が出てた。だからこれもうちょっと普通に歌詞があったんだよ。それを小佐井君がアレンジして、短くして、大事な言葉だけ抜いて。面白いよね。
●なるほど。面白いです。アレンジってそこまでやるんですね。
一色:そこまで(笑)。まあ色んな事にチャレンジするのはソロだから出来る事でもあるし。歌詞もね、「ココロは二十歳」とかいい加減な事言わなきゃなって(笑)。
●そうそう(笑)。言った!と思いました(笑)。
一色:そんなワケねぇだろって。そんな二十歳居たら怖ぇわって。
●いやいや、それぐらいの勢いでいきましょうと(笑)。
一色:そう、気持ちはね。まあタイトルが『悪い冗談』だしね(笑)。

●3曲目『暮らしてた街』
一色:これもアレンジ的には、完全な打ち込みになってるじゃない?エレクトロな。俺のデモ段階でもちょっとはその要素は入れてたんだけど、小佐井君に振ったらやっぱり感じたんだろうね。ガッとこうなってきて、あ、ここまで行ったんだと。最初つばきじゃない方をって言ってたから、やっぱそっちになっちゃうよね(笑)。この曲は俺も作ったときから好きで、良い形にしたいなとは思ってて。良かったんじゃないかな。
●良いですね、一色君のエレクトロ新鮮です。歌詞的には?
一色:歌詞的には…まあ、あの頃こうだったよね系だよね、恋のね。あのときの恋はこうだったよね系。って誰かに纏められたんだけど、それだね。
●(笑)。エレクトロとちょっと物悲しい感じの。
一色:うん、物悲しいのは生まれつきだからね。
●生まれつき(笑)。

●4曲目『グレイプ』、ポップな曲ですね。
一色:歌詞が凄い暗いんだよね。歌詞がずっと暗くて、元はマイナー調の曲だったの、これ。マイナー調のバラードみたいな。で、また小佐井君に相談したら急にメジャー感のあるシャッフルに変えてきて。あれ?こんな感じになるの?って。でもそうしたら、逆に切なさが増すんだよね、歌詞が暗くて曲が明るいと。で、ずっとそういう風にやってみたいなっていうのもあったんだよね。俺の歌詞って暗いの多いでしょ。あとやったこと無い曲調を、シャッフルで、これで行こう!ってなった。ただ、歌い慣れてないから、こういう跳ねる感じ。俺、絶対跳ねない男だから。普通にやったらね。だから凄い練習した。
●おー。練習した!
一色:うん、だってこれ小佐井君に「1回歌って」って歌って貰って。
●仮歌?(笑)。
一色:そう(笑)仮歌を歌ってもらって、それを聴いて真似してたもん。目標は自分の成長もあるからね。勿論そういう所は恥ずかしがってちゃ駄目だ、って。お願いします歌ってくださいって(笑)。
●最初はマイナー調で歌詞も暗めでって、いつぐらいに書いた曲だったんですか。
一色:これは退院してスグかな。『グレイプ』と『星の軌跡』は退院してスグ書いた曲。だから結構歌詞が…自分の中でだけどね、より、自分の中でつばきっていう感じじゃないなって気がしたの。別に全然変わらないんだと思うけどね、俺以外が聴いたら「普通だと思う」って言われるかも知れないけど、何か俺の中では『グレイプ』と『星の軌跡』は何かちょっと、つばきじゃないと思ってて。
●ちょとパーソナルに寄り過ぎてる?
一色:うん、あとアレンジも難しかったんだよね、俺が考えるのは。だからお蔵入りじゃないけどちょっと置いとこうと。ソロ演ろうって時に引っ張り出してきた感じだな。うん。
●まだ色々としんどい時期に書いた曲なんですね。
一色:うん。そうかもね。退院したばっかでまだ色々出来ない時に。曲作りもそんなに始めてないし。リハビリ時期に作ってたから。
●あと、タイトルの『グレイプ』は何処から?
一色:あ、それ聞いちゃう?
●歌詞には出てこないから、何だろうと思って。
一色:何でだと思う?意味なんて無いんだよ、そういう事。あのね、タイトルってあえてたまに意味の無い事を付けたくなるの、俺。それは何でもそうなんだけど。『アセロラ』とかね。
●あー。
一色:そういう事。「何でなんだろう?」ってなるじゃん?で、考えれば考えるほど分かんないんだよね(笑)。意味は無いの。仮で付けてて後で変えようとは思ってたんだけど、そのままに。俺そういう曲いっぱいあるんだよね(笑)。

●『素敵な勘違い』
一色:これは元々の俺のアレンジは、スタジアムロックっぽい感じで、ちょっと笑える感じにしてたのよ、本当はね。で、小佐井君に振ったら急に渋谷系みたいな感じになって返って来た。
●ああ(笑)。90年代前半な感じ。
一色:全然やってなかったな、つばきではと思って、この感じ。じゃあこれも良いなと思って。元とは全然違う、小佐井君が俺のアレンジ度外視して作ったね。
●はい。あと、歌詞の最後の一行が良いですね。
一色:「まだ道の途中だぜ」?それはいつも思ってる。うん、生きてるからね。生きてる限りはしょうがない。
●今回歌詞に「道」「歩く」「笑う」「信じる」ってフレーズが多い印象があって、後は「嗚呼…」で始まる部分とか。だからソロだしパーソナルに寄ってるんだなと。
一色:そうだね。ソロアルバムだしね、そりゃ寄ってますよ。うん、自分でもそう思う。「嗚呼…」っていうのも知らず知らずのうちに出ちゃうんだなって思います。