a flood of circle 『花』佐々木亮介 インタビュー
INTERVIEW[2015.11.26]
花って絶対どんな環境でも陽が当たる所に伸びていくじゃないですか?
当たり前なんですけど、その当たり前の凄さと強さみたいな物、
フラッドのがむしゃらな強さみたいな物も本能レベルなんじゃないかなって。

2016年に10周年を控えたフラッドが放つのは、佐々木亮介の自伝でもあり、フラッドの歴史とこの先の未来をディープに描いた『花』。
10年弱の活動でここまで色んなストーリーがあるバンドは珍しいのかも知れない。
ロックンロールを真ん中に取り戻したい、と語る佐々木の眼光は鋭さを増していた。

●『花』リリースおめでとうございます。シングル久しぶりですか。
佐々木亮介:そうですね、久々のシングル。来年10周年なんで、それを盛り上げるリリースとかライブとか考えてて、その一番最初の一点目にしたかったっていうのと、フラッド10年やってきて、例えば『シーガル』とか、ライブでこれブチ込んだら絶対勝てるていう曲っていうのがあるんですけど、ああいうのって無意識にそうなってるところがあって。あれはメジャーデビューして一枚目の盤に入ってたんですけど、シングルじゃないし、リード曲でもないし、ミュージックビデオも存在しない曲なんですよ、実は。なのに存在感のある曲になっていて。それは自分達でずっとカッコイイと思ってやってきた10年分のパワーみたいなものと、ライブに来てくれた人達が育ててくれたと思ってて、無意識の代表曲という感じなんですね。今回の『花』は、今後10年とか20年先を考えた時に、新しい代表曲を意識的に作んなきゃ駄目なんじゃないかなって思えて。この苦しいご時世にも関わらず、ドンとシングルを出して、これを育てようっていう意識ですね。
●ここから先を意識した、育てていく曲と。
佐々木:そうですね。10年後振り返ったときに、この曲がフラッドのライブの定番になってれば良いなって。シングルを出す意味とか自分の中でそう位置づけてたんで。
●作ったのはいつぐらい?
佐々木:作ったのは『ベストライド』出してすぐくらいですね。6、7月あたり。録ったのは8末くらいからかな。だから夏に作ったっていう感じですかね。
●今は曲作りはどんな感じになってるんですか?
佐々木:まず個人のプロセスとしては、今回は「代表曲を作るってどういう事なのか?」ってまた考えちゃったんですよね。結構、自分でもハードル上げてるなって思いながら曲作りに向き合ってたんで。今回も歌詞から書き始めちゃったんですけど、歌詞から書こうってなる前までも結構色々考えてて、本当に『花』で行こうってなるまでにかなり色んな曲を書いてましたね、試行錯誤しまくって。何がa flood of circleのど真ん中なのか?」って考えるのは結構…何て言うか、自分探しの旅みたいになっちゃってて。もう既に在るものを表現すればいいハズだったんですけど、考え出すと迷子になっちゃって。フラッドの一番の武器とは、とか、それをどうやって表現するかっていうのもまた悩みに悩んで、一番最初に辿り着いたのは「歌詞から書こう」、「この10年分、a flood of circleの全てを書いちゃおう」って思ったんです。全てが書いてあって、しかも未来が感じられるもの。そういう歌詞を書こうと思って、でも最初ここまでの全てを書いたら遺書みたくなっちゃって。
●やばいやばい(笑)。
佐々木:(笑)で、10周年の為に書いてんじゃん!って途中で思い直して、そっから自伝みたくなっていったんです。「自伝」って、どんな自伝も生きてる内に書いてるからまだ先の事書いてあるんですよね。「伝記」だと死んだ後に誰かが書く物だけど。でも自伝は途中だから、だから好きなんですよね、俺。そもそも人の自伝読むのも好きだったんですよ。自伝コレクターなんですけど。
●コレクター(笑)。
佐々木:うん、自分の自伝をここで書いちゃおうと思って、10年分の。結構波乱万丈だったなと(笑)。勿論自伝だから未来がある感じで書けて…でもそこに行くまでに自分では時間がかかった。歌詞はその方向で決まったから、コード進行とかメロディとか、リズムとかは結構、10年分蓄積してきた、育ててきたフラッド節みたいなものを意識してたんで、「らしい」リズムと「らしい」コードになってると思います。でもそれだけじゃ進化しないなと感じたんで、サビが転調するとか、やった事がない技にもチャレンジしてみて。
●ああ、なるほど。
佐々木:でもフラッドの芯を通す曲として、自分達らしい物は何なのか、音楽の良さも歌詞も全部精査して、一個ずつ自分の中でクローズアップしていって、一個一個細かくチェックして作ったんで、時間かかりましたね。で、バンドの作り方としては、これはセッションで作る曲では無かったので、一回自分で弾き語りの音源を作りきって、歌詞も8割ぐらいまでいってる状態でデモを作ったので、メンバーに聴かせて、プロデューサーの弥吉さんにも入ってもらって固めていった感じですね。
●メンバーに曲を渡す時は「こういう曲にします」って宣言したり?
佐々木:先にコンセプトと言うか「こういうイメージで作ってる」って伝えて聴かせる時もあるし、敢えて何も言わず投げる時もあるし、でもぶっちゃけ今回は曲作りに時間がかかり過ぎてて(笑)。だから先に言っちゃってましたね。シングルを出す意味とか、位置付けとか、「代表曲を作りたい」とか、先にメンバーに伝えてたんで。どういう物になるかなって構えてたとは思いますね。
●ちなみに2人に聴かせた時の最初の反応は?
佐々木:2人の反応は、姐さん(HISAYO/Ba.)は早かったですね。歌詞読んで、「頑張ったね」みたいな(笑)。俺が苦しんでたの知ってるんで。でも「この歌詞の強さを、今書けたのは凄い事なんじゃない」って言ってくれて、それで結構勇気出たっていう感じですね。で、ナベちゃん(渡邊一丘/Drms)はやっぱり一番付き合いが長いじゃないですか?フラッド10年って言っても10年やってるの俺とナベちゃんだから。姐さんも5年経つんですけど。
●ああ、もうそんなになるか。
佐々木:そう、だからここから先はこの3人の歴史のほうが長くなっていくんですけど。で、ナベちゃんは聴いて、スグには「良いじゃん」とかは絶対言わないんですよ。言わないのか言えないのか分かんないですけど。本当は後から聴いたら歌詞とか凄く気に入ってくれてたみたいなんですけど。ナベちゃんこないだ歌詞を分析するTV番組に出てたんですけど、『花』の歌詞について「世界はまだ素晴らしいって亮介が書いてくれたのは嬉しかった」みたいな事を言ってくれてて、「それ俺に言ってよ~」って(笑)。
●何で俺には言わないんだと(笑)。
佐々木:ナベちゃん的には、良いと思ってくれてたみたいですけど、ギリギリまで「スゲー良いじゃん」とは言ってこなかったですね。それはいつもなんですけど。
●まあ男同士っていうのもあるかも知れないし。
佐々木:あと10年の腐れ縁感みたいなものが。フラッドって結構…まあ打ち上げしょっちゅうやってますし、ワンマンなんか皆打ち上げしないよって言われる中で毎回やってるんで仲良いと思われてる所はあるんですけど、普段はべったりしてるわけでもないんですよ。ナベちゃん普段何してるか全然知らないし、姐さんはもっと謎なんですけど(笑)、でも現場での結束力の強さはフラッドは独特の関係だなと思ってて。この3人のフォーメーションも段々見えてきてて。それが何か、曲聴かせた時の反応にも現れて来てますよね。
●謎だらけ(笑)面白いですね。
佐々木:普通の幼馴染とかで集まったバンドじゃないんで。アー写見ても「何でこの3人なんだろう?」って自分でも思うっていう(笑)。歪(いびつ)だと思うんですよ。でもそういう謎な関係で良いかなって引き受け始めてて。他のバンド、怒髪天とかフラワーカンパニーズとか見てて良いな~って思ってたんですよね、ずっとメンバーが変わってないバンド。逆にウチはコンプレックス的な所もあるから。でも今はもうこの3人、この形が無敵なんだって思えてる。反応のタイミングとかも「早く言ってこいよ」とかじゃなくて楽しいんですよ。ナベちゃん、本当は気に入ってるんじゃないの?とか(笑)。フラッドにしかない普段の関係性が音にも現れてると思うし。写真の面白さとかにも出てきてると思いますね。
●写真もね、今回凄いですね。番傘出てきちゃった(笑)。
佐々木:そうなんですよ、番傘と花吹雪は木村さん(Central 67)のアイデアなんです。前作から関わって貰ってて、個人的には生粋のスピッツ好きとしてはですね、やっぱり木村さんのジャケットを見て育ってますし、木村さんのジャケットが生まれて始めて買ったCDですから。これもアイデア貰って、スグ良いですね!って。
●ちょっとビックリしましたね。インパクトある。
佐々木:うん、気に入ってますね。

●曲の事に戻すと、『花』は、ここから先の10年20年を考えると、今までを振り返りつつ、積み重ねて来た10年を良いとこ取りして凝縮して作った?
佐々木:そうですね。良いとこ取りとも言えるかな…今までフラッドのリード曲って結構…ロックンロールバンドっていう核が、コアがハッキリあるから逆に何にでもチャレンジ出来るっていう頭でいたんですよ。前作ではツービートやってみたりダンスビートやってみたり民族っぽいビートがあったり。結構色々チャレンジして来てるバンドなんですよ。リード曲並べてみると結構ね、ネタにこだわったと言うか音楽的にチャレンジしてる曲が多いんです。でも今回は初めて凄いストレートにやった感じだから、良いとこ取りと言うよりは…ネタじゃない部分、外から何かを引っ張ってくるんじゃなくて、自分に在るものは何なのか、内側にある部分だけで勝負しようと思ってた。基本的にはどんなバンドも自分達を更新しようと思ってる人達が多いと思うし、もしくは、ロックンロールをもうちょっと伝統芸能的に捕らえてスタイルを崩さずにいくのも全然あると思うんですけど。フラッドはちょっと難しくて、更新していこうとしてるんですけど、これは性格の問題ですけど、過去にあった傷とかを引きずって生きてるところがあるし、それをさらけ出してきたバンドだとも思ってるんで。だから…10年分書いちゃうのはフラッドっぽいかなって。曲調に関しては今までの総集編っていうわけじゃなくて、どの曲にもあった芯の部分だけを抽出してる感じかもしれないです。