音速ライン『鋼鉄の魔法使い』インタビュー
INTERVIEW[2016.11.16]
「聴くと泣いちゃうから聴けない」、そんなアルバム嫌だわ、と思って。
じゃあ「このアルバムでパワー充電だ」みたいな、そんなアルバムにしたかった。
切なくて泣けても聴いた後に前向きになれるっていうところをやりたくて。

3年ぶりのフルアルバムはクラウドファンディングを採用して制作!すぐに企画成立し「待たれてた」事を証明した彼等が作り上げたのは、ライブ感満載のロックアルバム!
制作までの道のりと新譜について全曲紹介インタビュー!
●アルバム、3年ぶりになるんですね。今どんなお気持ちですか?
藤井:むしろ早くライブがやりてぇ感じだね。だって発売前にライブでこのアルバムの曲やっちゃってるしさ、みんな聴いた事無いのにむっちゃノッてくれてる状況が、おそらくこのアルバムは化けるなって思ってて。作る前から、ライブで自分達がぶっちゃけられるような物にしたくて。
●ぶっちゃけれられる??
藤井:泣けるって言うよりは、「楽しそう!このアルバムでライブ演ったら」って、みんなに思って欲しいアルバムにしたくて作ったところもあって。もう4、5曲演ってるしね。
大久保:うん。そうね。ライブで演ってるね。
藤井:既に皆覚えちゃってるし。初心に帰ると、こうやってライブで、全然聴いた事ない曲を演って皆の心を捕まえて、お客さん徐々に増やしていったよな、って。それが当たり前だったのに、いつの間にかCD聴かないと乗れないとか、それはちょっと違うんじゃないかなって一回りして思って、こういうアルバムにしたかった。絶対そうじゃん。
●確か『チルは散る』の時も同じような意味合いの事MCで言ってましたね。
藤井:うんうん。それが基本じゃん、全然知らなかった対バンもさ、知らない曲でこのバンド良い!って思ってもらって、そのCD買いたくなってっていう順番じゃない?その順番をメジャーデビューして色々知られていくうちに、そんな当たり前の事を忘れていってたなって。CDも聴いた事ないし曲も聴いた事ないから乗れない、っていう状況はおかしいんだよね、どう考えても。
大久保:そうだね。何となく状況的にそうなってたっていうのもあるから。
藤井:うん無条件にカッコイイっていう所でやりたいなって、もう一回。
●はい。大久保さんはどうですか?気持ち的には。
大久保:僕も一緒だし、後は、今回アルバム作る時に、大人の意見とか全く無かったし…本当に自分らが聴いて欲しい音楽が入れられたっていうのは凄いデカい事なんですよね。だから最初の頃の感覚と言うか、こうやったらお客さんが喜ぶんじゃないかっていうのを単純に、純粋に考えて作れたと言うか。それがライブに繋がれば本当に良いなって、感じですね。本当の意味での原点回帰みたいなもんですよね。今まで何回か言ってきたと思うんですけど何か、初心というか。
藤井:今まで、ファーストを越えた、とか言って来たけど、今回言わないもん。
大久保:言わないね(笑)。
藤井:別モンだもんね。
●別物と。タイトルの『鋼鉄の魔法使い』はどこから?
藤井:最初、「魔法使い」ってキーワードを使いたいなと思ってたのね。何でかって言うと、3分間とか5分間とか、同じ時間でも、スゲー好きな曲聴いてる3分間ってあっと言う間に過ぎるでしょ?2時間とかライブ演っても、あっと言う間じゃん。
●ああ、確かに。
藤井:イコール、ミュージシャンって魔法使いっぽい感じのところってあるんじゃないかっなって思って。で、「2人の魔法使い」でも良いかなと思ったんだけど、何か弱いなって。
●ストレート過ぎるし(笑)。
藤井:そう。俺らヘビメタ好きだったし、
大久保:あははは(笑)。
藤井:「2人の魔法使い」は、音速だとハリーポッターみたいになるなと思って(笑)。ちょっと強さを足したいなって思った時に、俺がお世話になってるラジオ局のヘビメタ好きのディレクターがいるんだけど、「魔法使いなら『鋼鉄の魔法使い』良いんじゃない」って話をして、今凄い責任感じてるらしいんだけど(笑)。言葉のハマリも良いし、スゲー残るなって。で、、俺等もこう見えて頑固じゃん?
●ああ、そうですね(笑)。
藤井:で、そういう部分でもあってるし、考えたら色んな意味であってんなと思って。
●じゃあ、ある意味名付け親が居たんですね(笑)。
藤井:いるいる(笑)。
●最初にアルバムタイトル聴いた時と、中身を聴いた時に、あまりにもイメージがリンクしなくて(笑)。
藤井・大久保:あはははは(笑)。
藤井:あまりにもリンクしないっていうのが音速ラインっぽいんじゃない?
大久保:うん。一個一個説明しちゃうより、手にとってくれた人の想像力にお任せした方が面白いんじゃないかなって。説明しなきゃいけないんだけど(笑)説明したくない気持ちもあって。
藤井:だって『風景描写』と同じ四文字熟語で行くんなら『鋼鉄魔法』とかに。
全員:わははは(笑)。
藤井:ちょっと違うよなぁって。鋼鉄魔方陣?
大久保:あははは(笑)。
●はい(笑)。3年ぶりですが、どんな流れで作っていったんですか。
藤井:元々俺らを発掘してくれたLOFTの樋口さんが、何か俺らの活動が止まっちゃってるなって、思ったみたいで、その時に「クラウドファンディング」っていう物があるんだけど、それでアルバムとか作ったらどうだろうって話を振ってくれて。それが無かったら多分まだ動いてないと思う。普通にライブは演ってると思うけど、アルバム出そうねって話にはなってなかったんじゃないかな。そういう話になってたとしても、樋口さんの後押しみたいなのが無かったら、こんなに早くは作れてないと思う。
大久保:そうだね。その、色んなイベントの打ち合わせをしてる時に、例えばこういうのがあるんだけど、どう?って言ってくれて。それがちょうど一年前くらい。作りたいっていう気持ちもあったし。そういう中で言ってくれたんで。
●勿論CD制作にはかなり予算が必要だし、そういう意味でもクラウドファンディングでやりましょう、と。
大久保:そうですね。
藤井:うん。メーカー見つけるっていうよりは。
大久保:ライブで前金と言うか、チケット代として予めお金を頂くのと、一緒じゃないか?って考え方を提示して貰って。確かにそうだなと思って。それをやったら、ちゃんと制作しなきゃいけないっていう責任感も出てくるし。
藤井:色々言う人もいるけどね。「クラウドファンディング」に対してはね。
大久保:そう、最初、色んな意見があったんですよ。
藤井:一番戸惑ったのはウチの母ちゃんだけどね(笑)。「あんた何?詐欺始めたの?」
大久保:わははは(笑)。
●お母さん!(笑)。
藤井:違うって!って(笑)。
●あとは音速はキャリアがあるから、色々好きに出来るほうが良いのかも。
藤井:うん、そうなんだよね。
大久保:プロジェクトが達成出来る事になって、本当にありがたいです。さっきも言いましたけど、大人の意見も何も無く、純粋に出来たので。こういうタイミングでこういう経験って中々出来ないじゃないですか?凄いありがたいなって。
藤井:今までこんなことやってもらってたのか!って事もあるし(笑)。
●良くも悪くも全部知るっていう(笑)。それも楽しかったんじゃないですか?
大久保:やりがいはありましたけどね。
藤井:楽しいところと楽しくないところがある!うん。
大久保:(笑)。
●(笑)それでちょうど一年くらい前から動き始めたんですね。
大久保:そうですね。クラウドファンディングをどういった形で始めようか、とか。2月にワンマンがあったんで、それに絡めて発表して、とか、流れを作ろうっていって。それを仕込む作業とか、お客さんに支援して貰うためにはどうするか?って。
藤井:始めたらあっと言う間だったけどね。
●すぐ100%以上になりましたしね。
大久保:本当、ビックリしました。
藤井:開始の日、2人で飲んでたんですけど、ビックリしました。より、皆の顔が見えるようになってきたなって。ダイレクトにね。
●それだけ待たれてたんですよね。後押しした樋口さんは影の功労者ですね。
藤井:うん、何度も救われてる。
●クラウドを開始して、すぐ「作れる」のは確定して、どんな物を作ろうと思ってましたか。
藤井:これ言ったらスゲー分かると思うんだけど…震災後に、出した2枚のアルバムって、結構生々しい感情が歌詞にも出てて、日々楽しんだほうが良いよみたいな事もあんまり言わず、っていうところで、ウチの兄貴に「震災後の2枚って聴くと泣いちゃうから聴けない」って言われて。
●あー。
藤井:そんなアルバム嫌だわ、と思って。じゃあ、聴いた後に前向きになれるし、例えば朝に車の中で聴いても「ヨシ、今日もやってやる!」みたいな、「このアルバムでパワー充電だ」みたいな、そんなアルバムにしたかった。なんかこう、切なくて泣けても前向きになれるっていうところをやりたくて。それは出来たなと思ってる。うん。そこがデカイ、今回。
●確かに。でも当事者として、2人とも傷ついていたし、あの2枚は必要だったと思います。
藤井:うん。今回は色々飲み込んだ上で、日々どうやって楽しんだら人生って楽しいのかなってところで。あんま難しいところじゃない部分で作りたかったって言うか。だから「にょきにょきにょき」とか言うしさ(笑)。素直に。
●はい。そしたら直球なロックミュージックになったって事ですね。
藤井:だから「俺等」が出ただけだよな。でも曲の選び方は『風景描写』の時と凄い近かったよ。沢山ある中からどれ入れる?みたいな。足んないからあと1曲作んなきゃとかじゃなくて。本当は10曲入りにしようと思ってたんだけど、2曲増えて12曲になっちゃった(笑)。10曲入りで30分くらいのアルバムが良いなと思ってたから。でも、納まりきれなかった(笑)。
●でも12曲なのにシュッとしてますよね。
藤井:うん。俺は46分テープの世代だから。
大久保:あははは(笑)。
藤井:60分テープ嫌いだったもん。20分くらいで裏返して、トータル46分ってベストだよ(笑)。

●じゃあ1曲ずつ、曲のコメントを。『SO-MA』、相馬市かな。これを1曲目にしたのは?
藤井:うん。勢いがあるし、ドカーンって突破したい曲になってるから。これを聴く事によって、今までの僕らにバイバイしても、今日から前向きに、仕切り直せるよって言いたかった。
●サウンド的にはめっちゃロックっていう。
大久保:あはは(笑)。
藤井:すーげぇ激しいんだけど、でも場面は止まってるっていうイメージなんだよね。俺としては。止まってるからね、あの辺。まだ全然。でも無かった事みたいになっちゃってるしさ、現実はこうだよって感じ。何も聞こえないしね。動物達のパラダイスみたいな。
●生活の音は無いってことですね。
藤井:うん。どうしても住みたくて帰ってくる人は居るけど、若い人は帰ってこないもんね。そういう現状ってどうなのかなって思うけど。でも動いてる、止まってるようで生活は動いてるわけ。どっかで仕切り直さなきゃ始まんないし。っていう所を歌いたかった。
●だからこの曲が1曲目にこなきゃいけなかったんですね。
藤井:うん。
●いきなりハードロックだから、おう!どうした!って思いました(笑)。若返った?って。
藤井:あはは(笑)。
●演奏も楽しかったですか?
藤井:楽しかったと思うけど、あんま考えてないよね。
大久保:うん。楽しかったですけど。いつも使ってるスタジオとエンジニアさんなんで。これ一番最初に録ったからなぁ。
藤井:勢いづけたかったしね。きみ、気付いてなかったかも知れないけどめちゃめちゃ楽しそうだったよ!
大久保:ドゥンドゥン言わせて(笑)。
藤井:(笑)。