音速ライン『鋼鉄の魔法使い』インタビュー
INTERVIEW[2016.11.16]
●2曲目『アネモネ』
藤井:これは、ずっとお世話になってたPAさんが亡くなられて。そのことを書きたかったっていうか。その、一応恋人同士の話みたいにはなってるけど、主軸はそれで。…最後のあたりの歌詞は本当にそのまんまだね。
●はい…。曲に残しておきたかった?
藤井:めちゃくちゃ突然だったから。うん。本当にあっと言う間だったから…書きたかった。
●アネモネっていうタイトルはどこから?
藤井:パッと咲いて、すぐ居なくなっちゃう、花。なんかさ、いつまでも居ないよって事。そういう事が分かってて生活してる人のほうが強いじゃん。そういう事を歌いたかったのかな。…あれが最後になるなんて思いもしなかったもん。
●大人になればそういう別れもいくつか経験しますけど、普段は考えないですからね。
藤井:そうそう。お祖父ちゃんとかさ、両親だっていずれ居なくなるんだからね。居るうちに話せば良かったなって思わないように、色々聞いた方が良いよって、本当に。
●以前も同じテーマの曲がありましたけど、それの最新系と言うか。
藤井:うん、でもこれは体験した直後に書いたから、生々しいかも。同じ時期にね、お祖母ちゃんもいなくなっちゃったの。で、前にお世話になってた事務所の方も居なくなっちゃったの。立て続けだったから…厳しいなって。

●3曲目は『run run run』と。
藤井:で、色々飲み込んだ上で、走るしかないだろう、って。
●おー。なるほど。この曲は傷つきながらも走ってく感覚ですね。
藤井:うん。これはアコースティックライブで演ってたのかな?
大久保:レコーディングの後だね。
藤井:結構前から俺の頭の中にはあって、早くやりたいなとは思ってた曲だね。
●プレイ的にはどうでした?
大久保:プレイ的に?
藤井:記憶が無いんじゃない?
大久保:あー、毎回、レコーディングの時の記憶が本当に無くて。
藤井:でも記憶が無い時のレコーディングは良いんだよね。俺も無ぇもん(笑)。
大久保:今回全体的に、自分のプレイが本当に自然にって言うか、聴いたまんまでそのまま弾くっていう。
藤井:作りこみたくないって言ってたね。現場で考えたりしたし。
大久保:いつもは作りこんでたんですけど、今回はそういう事もなく、レコーディング入ってからあわせたり。
●感覚先行?
大久保:そうですね。ちょっと前から何となく思ってた事なんですけど、もっと自然に出来たら良いんじゃないかって。そうやった事が無かったんですよ。過去2枚くらいからそういう風にシフトしていったんですけど。
●ああ、ライブ感を大事にしてましたね。
大久保:そうそう。だから、今回はそれを現段階で究極にやってみたっていう感じですね。本当に自然に弾いたっていうか、無理してないっす。
藤井:元々俺はそういうタイプだし。俺は変わって無いけど、大久保にPAVEMENT(ペイヴメント)みたくなってくれよってずっと言ってて。
●あら(笑)
大久保:そういう事と違う(笑)。
藤井:(笑)こっち寄ってきたなっていう気はする。本当に何も考えないでレコーディング行って、そこで浮かんだやつを録ったりする。
●今回、音数が多い印象があったんですよね。
藤井:ん?全然無いよ。
大久保:使った楽器は色々あるんじゃない。ギターとか。ピアノとか。全体的に。
藤井:そんなあるかな。12弦くらいじゃない?
●何と言うか、色が多い印象だったんですよ。
藤井:ああ、だからギターの本数は少ないんだけど、ワン・フレーズ自体が強いんだと思う。だからキラキラしてるし。そう聴こえるんだろうね。

●『ウーロンハイ』を。
藤井:これは、『Beer can』っていう曲があって、ビールナイトで盛り上がる曲なんだけど、俺はビールが好きでビールばっか飲んでるんだけど、大久保はビール飲んだ後ずっとウーロンハイの人だから。この人の歌が無いとかわいそうだなと思って(笑)。「ビール・ファイ!」とか言ってるけど本当はウーロンハイだろ?って。
大久保:わははは(笑)。
藤井:ウーロンハイの歌があったら良いなと思って、元々は即興で作ったんだけど。それを膨らましたっていう。やっぱり音速ラインだから切ないほうが良いかなって。そういう物語をつくって。
●これ、ライブでめっちゃ盛り上がりますよね。手振りとか。
藤井:めっちゃ盛り上がるよね(笑)。
大久保:覚えやすいのもあるし。
●ギターフレーズがチャイナっぽいのも烏龍だから?
藤井:うん。ヒロハシ君楽しそうに弾いてるよね。
●でも歌詞みるとめっちゃ切ないですね。
藤井:田中情さんがMV作ってくれたんだけど、あこがれの先輩の女性がいて、その先輩と飲みに行くんだけどいつもすぐ帰っちゃう。今日こそ、みたいなMVにしてくれて。見るともっと曲が入ってくるよ。

●4曲目は『虹色の舟』、音速の王道的な。
藤井:夏っぽい、大瀧詠一みたいな曲が作りたいなって思って。これだけドラムが大木君なんだよね。昔録ってたドラムに合わせて今回録って。
●あ、じゃあ結構前からあった曲なんですね。
藤井:そう。歌詞はちょっと変わったけど。あと、その当時、テルミンみたいなやつで録った変な音を今回再現しようとしたら、もう一回出来ないって、じゃあこれに合わせてやるしかねぇって、その音も生かして。
●じゃあ色んな時の音が入ってるんですね。
藤井:音速って感じでしょ。
●最初ハードロック来てビックリした人がここで安心。
藤井:で、安心してまた次でビックリするんでしょ?(笑)。

●そのビックリが『だってネットに載ってたもん』。これは箭内さんと一緒に制作したんですか。
藤井:これは箭内さんとやり取りしてて、月に一回箭内さんが歌詞を送ってきて、それに俺が曲を付けて返すみたいな交換日記みたいな事をやってて、そん中で出来た曲。
●これはゴリゴリのロックで怒り、ですか。
藤井:まあ、ネットとか信用してんじゃないよって歌です。そういう風にいってる奴の話。だってさ、もしネットで音速ライン解散とか出たとしたら、絶対信じるじゃん、誰かが勝手に流したとしても。
●信じちゃう人はいるかもしれないですね。
藤井:だから、ネットの社会だけじゃないから、そういう事言うなよっていう曲。
●ネットに踊らされるなよと。
藤井:ちゃんと生身の物を信用しなさいって。だからライブ来なさいって。
大久保:YouTubeばっかり見てんじゃねぇよって。
藤井:YouTubeじゃ見た気になってるだけだぞって。実態を掴めよって。

●ガーンといった後に『光のその先へ』。和のテイストとキラキラと。
藤井:これは何か、自分らが光のその先に行きたかった時代に書いた曲。事務所やめたくらいの曲。
大久保:2年位前だね。
藤井:だからすぐにでももう一枚作れるくらい曲あるから(笑)。その点は『風景描写』と同じだった。
大久保:逆にどれを選ぶか選定に迷うっていうか(笑)。
●これは音作り的には?
藤井:同期物にしたくて。キラキラした同期に載せてみたいな。元々の原型をそれで作ってて。でも、もっと素直な音だったんだけど、レコーディングして、ミックスして、飲みに行って。スタジオ帰ってきて、いじってたら出来た(笑)。だから無邪気な。ハマッタって思ったらオサムさん(エンジニア)が奇跡的に録っててくれて。
大久保:たまたま、レコーディングボタン押したのがその同期とハマって。
藤井:だからオサムさんと居酒屋のおかげ(笑)。
●そういう意味でも魔法起こってますね(笑)。
藤井:起こってる起こってる!
大久保:(笑)

●次は『KOZONO3sts』これ何て読むんですか。
藤井:「コゾノサンエスティーエス」ね。「小園さん SAVE THIS SONG」って事なんだけど。グループ魂のベースの小園さんと飲んでたんだけど、俺がめっちゃ酔っ払っちゃって。記憶に無いんだけど、色々話してたらしくて。「俺こうやって話してる間にも頭ん中メロディぐるぐるしてるんですよ」って言ったらしくて。「じゃあ今でも曲作ってたりするの?」って言われて「してます、今こういうの流れてます」ってそこでメロディと歌詞をそのまま言ったみたいなんだけど、俺は覚えてないわけ。次の日の朝会ったら、「藤井君、昨日曲作ったの覚えてる?」って。その場で小園さんがこういう曲作ってたよって歌ってくれて。
●わー。
藤井:ちょっと変えたけど。それで、小園さんが覚えててくれなかったらもう無かった曲だから、小園さんの名前入れたほうがいいやって。小園さんに確認とって(笑)。
●凄いですね(笑)。これは各ソロパートもあって。
藤井:そう、ライブでね、『スナフ』みたいな曲にしたかったっていうのもあって。
●はい。でも記憶が無かったんだなって。
大久保:(笑)。
藤井:そうね。だから常に作ってるって事なんだよね。自分に言い聞かせてるもんな、歌詞も。間違いじゃないっていう事。あと、これ小園さんが「すっげーシンプルな歌詞だね」って言ってた。
●でもロックってそういうもんですよね。
藤井:でしょ?説明なんてしたってね。