●3曲目『フューチュラマ』 篠原:これも、青梅行って帰ってきて作った(笑)。何か、歌詞とか曲調とかのイメージは、若干ネタばらしになるんですけど、漫画の「20世紀少年」の、浦沢さんが書いた『Bob Lennon』って曲で。あと、昔の乗り物で『フューチュラマ』ってあって。ニューヨーク万博で、アトラクションとしてあった乗り物なんですよ。「懐かしい未来」って一番しっくり来る言葉だったんですけど。 ●昔、想像した未来みたいな?手塚治虫の漫画のような。 篠原:あー。そうなのかな。何か、人間のイメージの未来の話し。不思議な言い回しですけどね。 ●そして実体験シリーズでもあると(笑)。 篠原:そうですね。2曲続けてどこかに行ってますね。フィールドワーク(笑)。何か、福生にしても青梅にしても、ちょっと懐かしい感覚があるんですよ、時間が止まってるような場所で。そういうのも影響あるのかな。 ●次は4曲目『写真』 ナナ:これは、最初、シンセサイザーを入れるようなイメージだったんですけど、曲が出来てスタジオに持っていったら、ヤコブさんがイントロを急に弾き出して(笑)。 ●あのイントロを。 ナナ:私、正直、びっくりしたんですけど。 全員:(笑)。 ナナ:でも面白いなと思って、そのまま、ああいうアレンジにしました。 篠原:あれはめちゃめちゃトリッキーだったよね。 ナナ:でも良い感じ。今となってはしっくり来る。これはおばあちゃんの若い頃の写真を見た時に出来た曲で、うん…何か車を乗り回してる写真があって、ボンネット?車の頭?に乗っかってる写真がいっぱいあって。 篠原:しかもそれスカイライン説が(笑)。 ナナ:そう、ぽくて。あとユーミンの『COBALT HOUR』とかが出た頃で、70年代?ですね。 ●途中、ボーカルにエフェクトかかった様になるのは? ナナ:あれ、ずっとやりたくて、ちょっと違う感じになったんですけど。結構何回もどういうエフェクトにするか試して。 篠原:エフェクトの掛け方も何パターンとかやってみて。 ナナ:そういうの初めてだよね。 篠原:1stの『Have a nice day! 』でやってるかも。 ナナ:そうか。面白くなったと思います。何か、ふっと思いついてレコーディングの時にやってもらってっていう感じですね。パッと思いついた。 ●結構レコーディングの段階で変わったりもするんですか? ナナ:あ、レコーディングでありますね。 篠原:元々そんなにカッチリ固めてレコーディングに入ってなくて、「ロケットが飛ぶ感じのギターソロを弾いてくれ」とか(笑)、言葉で説明したりもするんですけど、結構遊びは多いような気がしますね。これもそういう感じだったのかな。 ●5曲目『夢でもし逢えたなら』 ナナ:これは、実は割と前からあった曲で、絶対バイオリンを入れたくて。これは私が一人でギターと歌を同時に録ったんですけど、音が少ない感じにしたかった曲です。 篠原:結構ナナさんの曲って、不思議なコード進行の傾向があって。最終的にはシンプルに纏まってるんですけど、お互いに手癖って言うか、それで作る事が多くて。 ナナ:うん。メロディが出来て、後からコードを付けるから、ちょっとやりにくい?かな。 篠原:あ、メロディを先に作ってるの? ナナ:うん。 篠原:初めて知った(笑)。 ナナ:自分でも若干気付いてきて、多分他の人めっちゃやり辛いんだろうなって。 篠原:いや、それは大事だよ。僕はそれがやりたいし。コードで縛られて、ギターのキーだけで、コードで手癖でってやってたら、限界を感じるので。そういう方が良いと思う。 ●メロディ先で、頭の中にあってハミングとかで? ナナ:そうですね。ギター持って弾いてコードを付けて。これは夜に出来た曲で、歌詞はそのまんまですね。眠れなくて、出来ました。このころ何か上手く眠れなくて。っていう曲です。最近はちゃんと眠れます。 ●6曲目『ツバメ』 ナナ:これ、おじいちゃんの曲で、おじいちゃん家からツバメが飛んでいるのがよく見えるんです。おじいちゃんは昔から「ツバメの詩を書いてる」ってずっと、毎年言ってるんですけど、全然見せてくれなくて。書いてるはずなのに。 篠原:(笑)。 ナナ:それで、いつかのお正月にお酒を飲みながら、「いつかその詞を曲にしたい」って言ってて、でも中々見せてくれないから、勝手に作った曲です(笑)。おじいちゃん、書いてるはずなんですけどね。 ●(笑)おじいさま詩人なんですか? ナナ:ああ(笑)全然違います、趣味で書いてるだけで。 篠原:僕はツバメって実体験があって、実家の車庫にある時期からツバメが巣を作ったんですよ。だから、僕はこの詞を見て勝手に実家の父親・母親を感じてたりして。 ナナ:そうなんだ。 篠原:うん。あと、歌詞の中に「坂の多い街」が再び出てきて、自分の家みたいな感覚もあったし、不思議な気持ちでした。 ●私も「坂の多い街」でハッとしました。 ナナ:ああ、でもそういう受け取り方をしてもらえるのも面白いですね。実際私の街も坂が多いんです。 ●あと「許すことの大事さを」が深いなと思って。 ナナ:家族って、そういう事なんだなって。 篠原:あ、これは音楽的にも面白くて、キーボードの谷口さんがホンキートンクな鍵盤を見事に、めちゃくちゃ良いフレーズで弾いてくれて。それで曲が物凄く華やかになったし。ラッキーオールドサンの曲で、僕が初めて…あ、初めてじゃないか。 ナナ:ギター? 篠原:ギターソロを、勿論今までも弾いて来てるけど、ギターソロを弾くぞ!って弾いたのは初めてかもしれない。その直前にヒアウィゴー!って小さい声で叫んでるんですけど、それは自分が頑張ってます(笑)。 ●7曲目『I want you baby』 篠原:これは結構かけあいも多くて。1stに『二十一世紀』って曲があるんですけど、それの延長線上にあるような曲ですね。その、曲の雰囲気とか、あれの進化系っていうイメージがあって。単純に男女の事を歌ってるかって言ったらそういうわけでもなくて。男女の姿を借りて、憧れた時代と今をリンクしているつもりもあります。ナナさんの『夢でもし逢えたなら』を経て、この2番のサビ、「夢で逢えたら タイムマシンは要らないでしょ」ってフレーズが出てきた気がします。 ●色々言葉がリンクしてるんですね。 篠原:そう。ある意味『フューチュラマ』もタイムマシンみたいなイメージがあったりして、そういうのだったり、ロックンロールは今が一番良いとか、言ってみたいし。チャック・ベリーは死んじゃったけど。 ●このアルバムのテーマがギュッと詰まった感じですね。「いつかふたりでみた映画」も何か、苺白書とか。 ナナ:引用シリーズ(笑)。歌詞が、良い歌詞。 篠原:曲の構造として面白いなと思うのは、サビにもう一回いって終わらないっていう、終わり方が、個人的に満足してます。あと、バイオリンが素晴らしかったですね。…これ言うの恥ずかしくて悩むんですけど、ザ・モーニング・ベンダーズの『エクスキューズ』っていう曲があるんですけど、それにアレンジのヒントを受けて。2010年前後のUSインディーでは僕が一番シンパシーを感じていたバンドなので。そこが若干影響受けたアレンジになっています。 ●篠原さんはアレンジのネタを言う時が一番恥ずかしがりますよね(笑)。 篠原:いや、恥ずかしいですよ、アレンジのネタ言うのは。スゲー恥ずかしい。 ナナ:でも結局言うんだよね(笑)。 ●8曲目『すずらん通り』 篠原:これは『さよならスカイライン』と対になると言うか、同時期に出来た曲で、このアルバムの古参の曲なんですけど…これは神保町の「すずらん通り」で、今日もちょっとカレー食べに行ってたんですけど(笑)。 ●カレー(笑)。 篠原:弟とすずらん通りでキッチン南海のカレーを食べに行った時に出来た気がします(笑)。若干歌詞に加筆とか、引いたりもあるんですけど、基本的に原型はその時に出来て、当時の僕はちょっとフラフラしてた気がするんで(笑)タイミング的に。何もしてなかった気がする。これも…そういう意味では『ベースサイドストリート』と同じで、実際に行って、バーッと出来たと思うんで。 ●夢を追っている人と、その隣りにいる人?ですか。 篠原:そうですね。これは日々の生活で、自分が言わないような事を言って生活しているだろうし、みんな。自分も下手なりにやってるんですけど、生きるために。個人的には、この曲…石指拓朗さんっていう非常に尊敬しているフォークシンガーが居て、彼の姿が若干脳裏に掠める瞬間がある曲で。自分の気持ちも当然入ってる曲だし。東京で音楽やってる人、音楽に限らず、頑張ってて、ちょっと宙ぶらりんになることを経験した事がある人には伝わるんじゃないかなって思ってます。 ●ナナさん、どうですか? ナナ:この詞に限らず、篠原さんの歌詞は中に篠原さんが居る詞だなとは思います。これもヤコブさんのギターが素晴らしいです。 篠原:牧野さんのベースも中々渋い事をやってるので、スゲーカッコイイです。 ●自分の歌詞を歌う時と、人が書いた詞を歌う時は違いがありますか? ナナ:ラッキーオールドサンの曲でどっちが作った曲でという区別を意識することはないです。自然と歌えてますね。