the coopeez『appealtime』インタビュー
INTERVIEW[2017.10.27]
「昔やったら自分のデモのイメージばかりを追い求めてたけど、そういうことを根本的に一旦やめようって。
そういうスタンスでいないと、この4人でやっとる意味ねぇよなって思うようになった」

フロントマン・藤本の“僕らしいもの”というテーマから始まったアルバム制作はメンバーの意見やアイデアにより、当初の思惑からは離れたものに…。
しかし、出来上がったのは、the coopeezの「最新」と「最高」が隅々まで詰まった大傑作!
メンバー間の絶妙なバランスをインタビューでも感じながら結果的に今作は、4人の”自分らしさ”が集まったものなのかもと思いました。
約2年振り、4枚目となるアルバム、その名も『appealtime』。
今がそのとき。あなたの元に、この音楽が届きますように。
●4枚目のアルバム『appealtime』、素晴らしい作品でした。今作はどういうところから始まったのですか?
藤本浩史:去年色々事情があってアルバムが作れなくて、今年は作ろうって話はしてたんですよ。
●3枚目『rucksack』が出たのが2015年の8月なので、約2年振りのアルバムですよね。気持ち的には去年作りたかったと。
小川宏実:お金がなかったんですよね。
全員:(笑)
藤本:過去の制作費の回収が去年できなくて、予算がないから去年は無理やなって話になった。それで去年はそれを返済しつつ、次に向けて知ってもらう人を増やそうぜって言って、結構ライブをやったんですよ。
山本聡:映画館でライブやったりイラストの個展してみたり、違う打ち出し方でやる活動がメインだったんですよ。
藤本:旧グッゲンハイム邸でアコースティックイベントをやったり。
●藤本さんの弾き語りライブもやったりしてましたよね。
山本:そういうのに力を入れて、今までとは違うやり方で出来るんじゃないかというのを試してましたね。
●一年そういった活動をしてみて、手応えというのはあったのですか?
山本:あるとこにはあったけど、なかったところにはなかった。今まで来てくれてたお客さんに対してというか、狭いところで濃いものは出来てたんですけど、広いところでみたら新規のお客さんは増えてなかったのかなと。
藤本:去年一枚だけ『口以外すべて口』という楽曲を出して、そのツアーを廻ったんですけど、お客さんが全ヶ所半分になったんですよ。東京とか大阪とか2年前初めてワンマンやった時から半分になってしまって、「どうやったんだろうねぇ?」って。でも、内容とか空気は凄く良かったんですよね。結局、流通とかアルバム単位で出さないと、人って興味を持たないのかなとか、色々考えた年ではありましたね。
●なるほど。今作の制作が始まるときに、作ろうとしているものの具体的なイメージはあったんですか?
藤本:去年色々ライブをやってきて、中途半端は良くないなって思って、一回自分本位の、自分という人間がめっちゃ出てるような、今までも出てると思うんですけど、もっと意識して、これ藤本っぽいよなってものを一回わがままで作ってみたいと思うんだけど、どう?っていう話をメンバーにしたんです。極端に言ったら、自分がやりたい曲を選んで、その曲をどうするかはみんなで考えようみたいなスタートでやってみたいと思うって。
●曲選びも自分でしたいと。
藤本:前は特にテーマもなく、僕が作ったデモの中からみんながやりたいっていうのを選んで、ちょっとずつ録っていく中でキーになる曲が出来たら、それに対してバランスとって曲を選んで作っていってたのを、のっけから曲を選んでやりたいっていう。逆にその分、曲のアレンジとかに関して、3人の要素を入れてくれるのは全然OKだからと話して。
森田夏音:今までは出来たから作るだったけど、作りたいものを作りたい時に作るのがいいと思ってという話だったから、それは凄く良いんじゃないかなと思って賛同しました。
藤本:最終的に、テーマは”僕らしいもの”っていうのはあったけど、最初に僕が選んだ曲はほぼ変更になったんですけどね。
全員:(笑)
●それはどうしてですか(笑)?
山本:藤本くんが言う”僕らしい”っていうのが、どこに出てるかっていうのがポイントだと思うんですけど、それが歌詞の面でより癖のある、藤本くんのアクが出てるようなものをやったらいいっていうところに落ち着いたんですよ。で、彼が選曲した曲を僕らで見たんですけど、彼が思う僕が出てると思うってポイントに対して、僕らが客観的に見て藤本くんの個性がちゃんと落とし込まれてるって曲の差があったんです。だったら、テーマはそのまま残すとして、選曲はむしろ僕らに投げてもらって選び直させてもらおうかなと思って、プリントした歌詞を見て選んだんですよ。曲の展開がとかメロがとかも置いといて、歌詞がどうなのかって。
●面白いですね。どのくらい変更になったんですか?
藤本:半分くらい…。
森田:そもそも候補曲が沢山あって。そこから絞っていく作業だった。
●藤本さんはメンバーさんが藤本さんらしいと思ったものが戻ってきて、曲を見てどう思いましたか?
藤本:へぇー、マジで、みたいな。
全員(笑)
藤本:デモとか歌詞はある程度いいと思って出してるから、曲が違うのが嫌っていう話ではないんですけど、その当時一番最近に作ってた、これ来たなって思ってたデモ曲も入らんくて、ほぅーって。単純に面白いなっていうのと、訳わからんくなったって言えば、訳わからなくもなった。そこで、自分が思ってる自分らしさっていうのは、端から見たら案外そうじゃないっていうのは今回感じましたね。みんなの方がよく知ってんのかなって。
●自分のことを。
藤本:はい。
山本:どの歌詞も藤本くんなんですよ。ただ、歌詞の中でもいろんなテイストがあると思うんですけど、唐突にフックになるような、どぎつめの言葉が放り込まれてくることがあって、そういうものがある曲の方がいいかなと思って、「そういうところに注目せえへん?」って言いました。言い方悪いですけど、朗々といいことを言い続ける曲よりかは、1個2個そのまま口から出た言葉みたいなのが放りこまれてる方が、より藤本くんかなと思ったので、そういうのがいいかもねって話をして、そっちにシフトしたかもしれない。
藤本:案外考えて書いているので、その辺が良くも悪くもでるんだろうなと思いました。不意に出た表現の方が、みんながおっ!てなるんかなって思いましたね。
●メンバーさんから選んだ曲っていうのはどの辺りなのですか?
藤本:『浅瀬で溺れている』とか…
森田:『スーパーフューチャー』とか、そうやね。
山本:最初に僕が、このアルバムのリードトラックだって言い続けたのが『浅瀬で溺れている』で、これを最初に録ったくらいなんです。アレンジもそうなんですけど、言葉が凄く入ってきて、安い言葉で言うと刺さる曲だったんで、僕はこれが基準でしたね。このアレンジは藤本くんが持ってきたのから、ほとんど変わってない。
●私もアルバム聴き終わった時に、凄く残った1曲でした。藤本さんはこの曲は一押しって感じではなかったんですか?
藤本:いいとは思ってましたけど、そこまで持ち上げられるとも思ってなかったですね。
山本:持ち上げてはないんだけどね。
森田:それ、絶対言うと思った。
全員:(笑)
●『アニマルプラネット』は昔の曲だと思いますが、今回入れたのは?
森田:これは最後に出たんですよ。アルバムを作る前にもレコーディングしてたものがあって、色々踏まえるとアルバム一枚にするには想定してたよりも多い曲数になって。最初はそれを全部そのまま出そうって言ってたんですけど、それは違うんじゃないかってなって、もう一回選び直した時に、『アニマルプラネット』入れましょうってなって入れた気がします。
●ちなみに他に昔の曲はありますか?
山本:外れましたね。
●というのは、この曲だけ歌詞が他の曲とは違うと思うんですよ。
小川:あぁー。
森田:そうそうそう。
●歌詞を見ながら選んだ中で、これが残ったのはまた違う理由があるのかなと思って。
山本:さっき言った、歌詞の中に突然身も蓋もないような言葉が放り込まれてくるっていうのは、割と僕が藤本くんと出会った頃の曲に多かったんです。これはその時からの曲なんですよね。ライブではずっとやってたんですけど、そのテーマにも合うだろうし、また録音したいなとも思ってたので。
●ご自身では違いはあまりわからないですか?
藤本:うーん、でも今だったら書けへんだろうなって感じはあります。今はまた今の書き方で書けるものがあるし、当時にしか無理やなってもんは、それはそれでいいことだと思ってるんですよね。昔の曲が最新のアルバムにハマるなら面白いなとは思いますけどね。
●この曲はクーピーズの中でも最長の曲ではないかという、8分超えという大作になってますね。
山本:昔の曲は長いんですよ。
藤本:5分6分、当たり前だったんですよね。能力がなかったんでしょうね。
●どういうことですか?
全員:(笑)
藤本:程よい時間に内容量をまとめる能力がなくて、ダラダラとやって。
●それは歌詞が長くなってしまって?曲を作る時点で?
藤本:文章量が多くて、収めようとしているのもありますね。
●最近は意識的にコンパクトにしているんですか?
藤本:基本的には制限かけないですけど、ある程度、程良い時間で収めようっていうことは考えるようにはなりましたね。ほっといたら長くなっちゃうんで。だから『スーパーフューチャー』も歌詞飛んでるんですよ。もっと長くて、それも二人(山本さんと小川さん)にバッサリ切っていただいて。
●(笑)。それはどこが抜けてるんですか?
藤本:もっと先の部分があったんですけど、ま、いっかなって。やりたかったら弾き語りでやったらいいかなって。