■2014.06.21 代官山UNIT
撃鉄 1st full album「NO UNDERGROUND」 release tour
~バーいってバーやっちゃおうよ~
REPORT[2014.06.27]

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全6公演にわたる 1stフルアルバム『NO UNDERGROUND』リリースツアーを行なった撃鉄。期間中、ツアー公演以外にも多数のイベントに出演していた彼等は、全国各地を巡りながら楽曲たちを大きく育て、アクトは日増しに鮮烈さを増し、またボーカル・天野ジョージの肉体も着実に仕上げられ、完全に満を持した形でファイナルワンマンを迎えた。

アルバムでも豪快に1・2曲目を飾る『coolなとき忘れたJapanese』『渋谷』が威勢よくファイナル幕開けを彩り、さっそくフロア前方にはモッシュの渦が! 続く『てんやもん』は、田代の躍るようなベースがこちらの浮かれた気分にもっと弾みをつけるよう。間奏では「説明しよう!“てんやもん”とは、出前のことである…!」と、天野の親切な解説付き。
いつにも増して獰猛に挑発的にせりだしてくる『ヨルテツ』の音圧に呼応してか、4曲目にしてダイバーが発生するほどの熱い展開。間髪入れずの『犬』の高速ビートで、フロアには加速度的に熱気が充満していく。勢い込んでどんどん爆走をキメこむ撃鉄はもう全く起承転結など度外視で、最初からどこを切ってもハイライトにしか見えない。6曲目『まるで世界は...』までノンストップで、フロアを一気にアッパーなテンションへと駆り立てた。

『ハイウェイ』では森岡の空間を裂くようなギターに目の覚める思いをし、また次第に轟音グルーヴに巻き込まれていきながら、気が付けば陶酔の境地にもっていかれていた。この曲にはアルバムタイトル『NO UNDERGROUND』が歌詞に含まれていて、「ハイウェイの上 NO UNDERGROUND」のリフレインが印象的に残る。強烈な圧倒感とほどよいキャッチーさが絶妙に共存する、珠玉の1曲だと思う。続く『上海』は、なぜだか天野の歌に壮絶な熱量を感じた気がして、胸を強打された感覚に陥った。なぜだ。

旧譜の中でも抜群の人気曲『P.S.』はただでさえ凄まじくアゲられる曲なのだが、間奏で天野「皆さんここで、ひとつになりません?」と、大量のボックスティッシュをドカァッとフロアに投入。全員ティッシュを1枚ずつ手に取るよう指示が下される。そしてサビの最高潮部分で一斉にティッシュを高く掲げてくるくる回し、ひとつになったような気がするオーディエンス。ただ、フロアに空気の対流が巻き起こるなどするタオル回しと違って、ティッシュの場合はおびただしい数の白い物がしとやかに空中を舞いはするが、ティッシュを回す手には空気抵抗も感じず手応えもカッスカスで、なんというか、すごく、何も起きないのだ。その何も起きなさ感、行為としての意味不明さが最高におかしく、そのおかしさでまた奇妙に気分がアガる。凄い仕掛けだ。

「やれてんの?ほんとにやれてんの?やれてなかったらおいてっちゃうんで!」という天野のサディスティックな煽りから『やっちゃおう』のイントロが始まり、突然ステージにマイクスタンドが増えたのが見えたその次の瞬間、今回のアルバム『NO UNDERGROUND』のプロデューサーを務めたMO'SOME TONEBENDER・藤田勇がステージへ駆け込むように登場!ジャンベを打ち鳴らし、この曲の高揚感をよりいっそう激しく衝き上げる。これヤバすぎる!! 続く『まさかね』も藤田のビートが楽曲を彩り、思いきり華やかなダンスナンバーと化した! ラストには近藤とパートを交代し、藤田が華麗なるドラムさばきを披露。ここまでされてはこちらのテンションはもう天井知らずにハイに昇り詰めるばかり。

MCに入り、前作と比べて変わったと自ら確信していること、そして力強く発せられた「明らかに前進してます」という天野の言葉。それは少々心動かされる場面ではあったが、このすぐ後には和気あいあいムードなメンバー4人のMCへ進展。ツアーでの思い出を話す流れで、主には森岡が札幌で初めてガールズバーへ行ったこと、そして最近よく言われる「綾野剛似」という武器を用いてナンパに挑戦したこと、あっさり断られたことなど、かなりの森岡独壇場トークがバースト。そんなふうにいろいろあったツアーもファイナルを迎えた今、「“今日がいちばん楽しいです!”とか、まだそんなことないです。こっからブチアゲてこうぜ!」という天野の挑発的な声とともに、フロアの空気が再び動き出す。

重めのドラムが奥行き深く響いて始まる『部屋』は、不穏に迫り来るギターリフも相まって、凄みでできた怪物的なものが巨大になって襲ってくるような壮絶なイメージ。丸飲みされてしまいそう。コール&レスポンスは「ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!ガールズバー!!」の連呼で、先のMCに合わせた仕様に。そこから『とどめ』『高速になりたい』という高速ブチアゲ曲の2連発でフロアを劇的に揺さぶってから、「ダンスの時間でーす!」と天野の高らかな宣言が発動し、ハイパーダンスナンバー『鐘』へ! ワイヤレスマイクを着けて、フロアど真ん中に設けられたお立ち台へと向かう天野。お立ち台の上で、スポットを浴びながら踊り狂ってフロアのテンションを牽引する姿、とてつもなく格好良い。「今、日本一お立ち台の似合うバンドマン・天野ジョージ。」とまで言いたくなるほどサマになる。その場面の鮮やかな空気感は、次の曲『とおくへ ~Don't stop~』へも余韻を残しているようだった。
本編終盤にさしかかる頃。『はじまりの歌』『漕ぎだした』『瞬間』『セミ』と連なった楽曲たちの表情が、ここにきて思いがけず、時折なんだかエモいのだ。『はじまりの歌』で受けた、心臓のあたりが軽く熱を帯びる感覚。『漕ぎだした』の、晴れ間の場所へと出たような明度感。そして『瞬間』の、儚さと表裏一体のような無上の煌やかさ。実はツアー全6公演中うっかり4公演に足を運んでいた私自身が、その一連の記憶をベースにして勝手にエモくなっていた可能性も大なのだが、これらを自分の思い込みが感じさせたに過ぎないものだと片付けていいのか、ちょっと分からないでいる。特に『セミ』では、間奏でこの曲と撃鉄自身を符合させるような天野のコメントが挟まったのも手伝ってか、他の曲より少し強めに貫かれる感覚をおぼえてしまった。

そこから急転直下の『東京』が、衝動まじりの鳴動でまた急激に高度を上げてゆくのを、無心になって追いかけた。続く『かも』で、ゴールに向かってさらなる激走。フロアも総仕上げの様相に到達した。森岡・田代・近藤が間奏を続けて場を支える中、「夏、始めちゃう?」なんて言いながら天野、いきなりクジラにライドオン(=海やプールに浮かべてしがみつくなり乗るなりして遊ぶクジラ型のアイテムにまたがってフロアにダイブ)。クジラに乗った天野ジョージが、まもなく訪れる夏を先取りせんばかりに、フロアじゅうの人波を乗りこなす。同時にフロアに放たれた2匹の大きな虎(のぬいぐるみ)も、客の頭上を縦横無尽に飛び交って元気そうだ。そんな底抜けの祭り騒ぎでもって、本編を派手にしめくくった。
アンコールでは、『ろっぽんぎ』MVを思い出させるスーツ等の衣装で登場。「最後、めっちゃハッピーな曲で終わりたいと思います」と、この日いちばん眩しい光を放射するような曲『ろっぽんぎ』で、たまらなくきらきらした多幸感がフロアに拡散していく。すっかりふんわり感に包まれたひとときを経て、「やべぇ、これじゃ終われねえ」と天野が告げるや否や、さっきまでの空気を突き破るような『場違い』が、ステージの上も下も跳ねさせ踊らせ凄みも見せつつバシッとキメた。

最後に、おもちゃの小さなゴルフセットを持ち出してきた天野。ステージ中央に立つ藤田勇の頭上からゴルフボール大の球を放つと、フロア中央お立ち台に置いたホールに見事イン!ホールインワン!やったー!大団円!大笑い!
なお、球とホールは長い長い長い糸でつなげてあり、球は糸をつたってステージ→お立ち台間をゆっくりゆっくり進んで安全に必ずインするよう細工されていた。球の進行を見守る皆の爆笑とともに、撃鉄リリースツアーの全てが終わった。
誰が見ても安心して健全に笑えるこの感じ。何の影ひとつ落としていない、輝かしいほどに限りなく高純度の「楽しさ」ばかりが満ちる空間。
これが、撃鉄のライブです。
この日、下北沢SHELTERにて開催される3ヶ月連続ツーマン企画の告知もされた。開催日は9月3日、10月10日、11月18日。撃鉄のライブがその翌日からの日々までも楽しくしてくれる感じを、この機会に一人でも多くが体験したらいいと思う。なお、対バン等の詳細は後日公式サイトにて発表されるとのことだ。

(文:オヤマケイコ/撮影:荻原楽太郎・岩田奈津美)

OFFICAL HP
撃鉄 http://gekitetu.jp
カメラマン・荻原楽太郎 http://raku-taro.tumblr.com/


SET LIST:
01. coolなとき忘れたJapanese
02. 渋谷
03. てんやもん
04. ヨルテツ
05. 犬
06. まるで世界は...
07. ハイウェイ
08. 上海
09. P.S.
10. やっちゃおう
11. まさかね
12. 部屋
13. とどめ
14. 高速になりたい
15. 鐘
16. とおくへ ~Don't stop~
17. はじまりの歌
18. 漕ぎだした
19. 瞬間
20. セミ
21. 東京
22. かも

EN:
01. ろっぽんぎ
02. 場違い