ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #4ゲスト:竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)【後編】
SPECIAL[2014.09.19]

ネモト:次の映画『世界の終わりのいずこねこ』は初めての劇映画だね。ずっとちんぐに「次撮らないの?」ってしつこいくらい言ってたよね(笑)
たけうちんぐ:(笑)。映画っていうものを尊大なものとして思い過ぎてる感じがあるんですよ。今まで映画に受けてきたものが大きすぎて。ああいうものを作るっていうことが今の環境下で出来ないっていうのがあったんですよ。でも直井さん含め、やらざるを得ない状況にして頂いて。直井さんは僕が自分からやらない人間だってわかっていて。
ネモト:追い込まれたんだ(笑)。
たけうちんぐ:ネモトさんにもご協力してもらいましたけど、キャスティングが凄い面白いことになっていて。
ネモト:脚本読ませてもらったけど、素晴らしかったよ。
たけうちんぐ:うわぁ良かった〜。直井さんも気に入ってくれて「面白いよ」って言ってくれてるんですが、その時は客観的に見れなくて。
ネモト:細かいディテールを設定してるのが活きてるなって。原作は西島大介さんだよね?
たけうちんぐ:はい。登場人物とプロットは全部書いてくれて、その基盤があったんでやりやすかったですね。
ネモト:でも凄いちんぐらしいものになってるよね。
たけうちんぐ:西島さんがプロットを「壊して欲しい」と言ってくれて。そのおかげで自由というか。第3稿をちょっと時間を置いて書いたら客観的に見れて、あぁこれはなんか面白いかもって(笑)。
ネモト:登場人物一人一人が絶望にしてるのに全然嫌な気持ちにならないっていうか、希望も感じて。
たけうちんぐ:僕の中で批判と肯定を全部一緒に入れたいなって。今回の映画は対になってるものがテーマで。鬱と躁もそうで。実際音楽の世界観はある種何かを諦めた境地のものだけど、いずこねこをやっている茉里さんは凄いパワフルに元気に歌ってるアンバランスさが面白いんで、いずこねこは常に対だから、そういうものを作りたかった。希望と絶望ってものをちゃんと描きたい。世の中のムード的にもそういうところがあると思っていて。人間はいずれ死ぬじゃないですか。どんなに楽しくても死ぬってこと分かってる。近未来SF的な設定なんですけど、隕石が地球に近づいていて関東は壊滅状態で、『新しい戦争を始めよう』の続きみたいな感じで、その20年後位の設定で、大阪にみんな移住していて。そろそろみんな死ぬっていうのは分かっていて、でもみんな慌てない。それは現実のみんないずれ死ぬって分かってるけど慌てないって事実を描きたくて。今の2010年代と地続きになっているように描きたかったんですよね。これ以上、文明技術が進歩しても幸せの基準は変わらないし、「これ以上何があるの?」ってどっかで思ってるんですよね。30代40代になって、これ以上何か期待出来るのかなって思っていたりして。
●はい。
たけうちんぐ:今回の映画はインターネットもテーマにあって、全宇宙ネットワークっていう宇宙中にインターネットが接続してるってところがあって。今の自撮りとか承認欲求の時代から、それがもっと進化して完全に当たり前になったって時代で、個人配信している女の子が主人公で。ニコ生とかありますけど、最近ツイキャスの配信をやっている人が今までの配信をやっている感じの人じゃない人が多くて。いわゆるDQNと呼ばれそうな感じのカップルだったり、何でこういう人達がやるんだろうって思って、僕の中では面白くて。
ネモト:そういうことが気軽に出来るようになったしね。フォロワーが1桁だとしても何かを出したいんだよね。自意識過剰だとかじゃなくて、何かを吐き出すことが本能的にあるのかなと思う。
たけうちんぐ:それが出せるツールが出来てきたってだけですよね。
ネモト:そうそう。会話と同じっていうか。
たけうちんぐ:何かしら自分のことをわかって欲しいっていうのは、小学生の頃とかに学校から帰ってくると親に面白かったこととか楽しかったことを直ぐ言ってたじゃないですか。それと同じで、今はツイッターとかにつぶやいたりしてるのかなって。僕は母親が何でも聞いてくれる人だったんで、当時ミスチルのファンクラブ入るくらい好きだったんですけど、学校で語れる人がいなかったんで、ミスチルの曲がめっちゃええねん!とかを親に言ってて。やっぱり誰かに伝えたいんですよね。
ネモト:でも伝えたことによって、過剰にレスポンスを求めてないっていうか。伝えることが重要っていう。
たけうちんぐ:あぁーそれ大事ですね。ツイッターも正直あんまり会話したくてやってなくて。
ネモト:すげぇ分かる!
たけうちんぐ:書いた時点で満足っていうか。あ、あと最近は凄い体調に異変が起こって。
ネモト:あ、そうだ!元々この対談の前にKING BROTHERSとZAZEN BOYSの対バンがあって、ちんぐを誘ったら「行きまーす!」って言ってて、でも結局来なくて。そしたらメールで「体調に異変があって行けませんでした。深刻な体調の変化で…」みたいな感じで心配だなって思ってて。
たけうちんぐ:凄い情けない話なんですけど、歯がメチャクチャ痛かったんですよ。痛みが本当に耐えられなくて、ロキソニンを飲み過ぎちゃって。
全員:(笑)
たけうちんぐ:1錠で痛みが止まらなくてイラッとしてしまって、一気に5錠位飲んでしまって。そしたらライブ前に副作用が出てきて。まず居ても立っても居られない感じでそわそわし始めたんですよ。生まれて初めての感じで。もう「寒い…」って歯がガタガタなり始めて、体が痙攣し始めて。ベッドに横になろうと思ったらいきなり体がバウンドしたんですよね。心当たりはロキソニンしかなかったんで、ネットで副作用を検索しようと思ったんですけど、震え過ぎて文字が打てなくて。
全員:(笑)
たけうちんぐ:それでどうにか痙攣って打ったら何故かアダルトDVDとかの情報しか出てこなくて。
全員:(笑)
たけうちんぐ:そもそも痙攣って調べたところで何になんねん!って話なんですけど(笑)、もう本当にテンパってて。僕、死ぬと思って、自撮りしちゃったんですよ。
全員:(笑)
たけうちんぐ:もう呂律が回らなくて喋ることも出来なくて。でも同時にどっか冷静な自分もいて、遺書も書けないし、震える手でパソコンの中のヤバいデータをゴミ箱に捨てていって。やっぱりいい人間として死にたいんで(笑)。でも消したら治まっちゃって、そこに残ったのは後悔してる自分ですよね。
全員:(笑)
●そこでデータ消すより、救急車呼ぼうとはならなかったんですか(笑)?
たけうちんぐ:ならなかったですね(笑)。最近こんなことで救急車呼ぶなとか話題になってるじゃないですか。こんなことって言っても一応死にそうになってるんですけど。人に迷惑をかけられないっていうのと、口が回らなかったのもあったのかな、救急車って選択肢がなかったんですよね。誰かがその姿を見たら確実に呼んでると思うんですけど。キンブラか痙攣かっていうね。
全員:(笑)
ネモト:あの日『新しい戦争を始めよう』向井(秀徳)君に渡しておいたよ。
たけうちんぐ:えっ?…マジですか?
ネモト:向井君が白石晃士監督の作品が好きだって聞いてたんで、その日白石さんを向井君に紹介したんだけど、フェイクドキュメンタリーとか好きなんだなって思って、その流れもあって、ちんぐのも好きかなと思って。
●向井さんはそれが竹内ミチヒロックのだっていうのは分かってるんですかね?
ネモト:うん、たけうちんぐのことは認識してた。
たけうちんぐ:マジですか!向井さんに自分の監督した作品を渡してもらうなんて、こんな自分史の中で凄い時に、僕は痙攣してたんですか…
全員:(笑)