ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #4ゲスト:竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)【後編】
SPECIAL[2014.09.19]
たけうちんぐ:自分の中でずっと夢と死っていう感じはあって。それがないと生きていけないですしね。10代の頃は寂しい奴だったからかもしれないですけど、よく自分が死ぬのを想像してました。本当に気持ち悪いんですけど、自分が死んで葬式でみんなが泣いてるのを想像して泣いてました(笑)。
●大分暗いですね(笑)。
たけうちんぐ:布団の中でずっと想像していましたね。
ネモト:自分がやってきたことをひけらかしはしたくないけど、死んだ後にどういう結果がでるのかなって言うのは気になる。どういう答えがでるのかなって。
たけうちんぐ:『素晴らしき哉、人生』っていう映画が正にそういう映画で、それを見てからそういう妄想に取り憑かれたんですよね。死後の世界は絶対に見れないから想像しようって。自分の価値ってどんなもんだろうってことを考えてしまった時期でしたね。その映画が本当に好きで。人は何かしら他の人に影響を与えて生きているっていう。今使っているカメラは亡くなった人のカメラなんですよ。亡くなった人のものを譲り受けてるっていうのがあって、そこに勝手に思い入れがあって。それと映画学校時代にお世話になった橋本信一先生ってドキュメンタリーをやってた方がいて、その方が『新しい戦争を始めよう』を撮る1年前位に亡くなったんですね。すごく悲しい亡くなり方で。そんな事をするような方じゃなかったんですけど。僕はその先生に学校を辞める時に相談をしていて、引き止められたりもして、東京のお父さんみたいな人だったんですよ。だからその人が亡くなったのが大きくて。その人に自分が撮ったものを見せたかったですね。亡くなった時に松江監督から電話が来て、「橋本先生がまさかそういう亡くなり方をするとは思わなかったね」って話をして、何かを感じたのか分からないですけど、「竹内君は大丈夫だと思うけど」みたいなことを言われて(笑)。「今後竹内君は作品を作る時に橋本先生のことを語っていった方がいいよ、それが供養になるから」って。だからってわけでもないですけど、それもあって自分が作品を作るには橋本先生は欠かせないんですよね。橋本先生は「映像には撮る人の汗が映る」ってよく言っていて。それは熱意が映るってことだと思うんですけど。自分が意識しているわけではないけど、僕のライブ映像には感情が映ってるって言われるんで、なんとなくそれに近づいていってるのがあるんですかね。感情消しているつもりですけど。映画学校のOBのブログみたいのに僕も書かせてもらったんですけど、そこに松江さんの備忘録がついていて、「竹内君は好きという感情を映像に表す初めての人だ」みたいなことを書いてくれてて、「あぁそっか、そういえば先生こういうこと言ってたな」って思い出した。僕にとっては忘れられない人ですね。亡くなった知らせを友達からもらった時も電車の中で号泣しちゃって。ショックすぎて葬式に行けなくて、それが今も心残りで。もう会えない、何よりも自分の活動を見せたい人だったんで、それをもう見てもらえないっていうのがね。これが自分の中の核心かもしれないですね。『始めようといってもすでに始まってた』の再編集版を作って、それにも『新しい戦争を始めよう』にも先生の名前を入れていて。亡くなった人の何かを引き継いでいく、そういうことを『新しい戦争を始めよう』でも描いたつもりですね。これからもそれは連鎖していけたらなって。死ぬことは仕方ないから、それを受け継いでいく、意識せずにそうなっているなって。
ネモト:今後も映画を撮っていくつもりはあるの?
たけうちんぐ:ありますね。実はちょっとやりたいことがあるんです。今回の映画は直井さんからお話頂いて、西島さんの原作があってっていう中で作っているんですけど、次がいつかは分かんないですけど、自分でお金を払える範囲で作りたいなっていうのがあって。今回の映画が一つの階段になってくれたらいいなって。僕の周りの人からの印象が愛のあるって思われてるのが嫌で…。「愛のある映像?なんじゃそりゃー!」っていうのがあって(笑)。
ネモト:ちんぐは愛情ももちろん持ってると思うけど、同じ位HATEな感じもあると思う。
たけうちんぐ:そう言われるのは一番嬉しいですね。仲良くしてもらっている映画の方から「(竹内さんの)映像は冷めてる」って言われて。「ですよね!」って思って。気持ちは入ってるんですけど、愛じゃない。僕が愛情持ってやっていること、僕の根本にあるものをひっくり返すというか、そういう物語にしたいと思ってて。
ネモト:ちんぐの映像は突き放してる感じもあるよね。
たけうちんぐ:そうですね。僕、対象に近づかないんですよ。位置を変えないし、ドキュメンタリー的な人に近づいて撮るってないんですよ。どこか離れてて、距離を必ず取っています。映像は愛があれば撮れるわけじゃないし、もっと冷徹な部分がないと撮れないんですよね。
ネモト:今日はかなり濃密な対談になったね。
たけうちんぐ:僕も喋ることによって考えがまとまったりもするんで、良かったです。最近ロケハンで関西に帰った時に、ちょうど兄貴も帰省してて、5年か6年振りに家族でご飯食べて、そろそろ次の展開を見せなきゃって。家族に凄く恵まれてきたから、ちゃんとお返ししたいなって気持ちも出てきてますね。どういう形かはわからないですけど。地元のバイトしてたシネコンのイオンシネマで上映する映画に僕の名前がクレジットされてたら、ある意味僕の人生はそこで成立するのかも。それを親が見てくれたら。それをやるためにするわけじゃないですけど、それも美しいかなって。
(文・小山裕美)