ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #5ゲスト:フミヤマウチ【前編】
SPECIAL[2015.04.14]
ネモト:「自由に歩いて愛して」はどうしてはじめたの?
ヤマウチ:最初は自分は関わってなくて。北沢夏音さんが「今度こういうパーティーをやりたい」って話を持ってきてくれたときに「あれ?これ俺がいまやってることに近いな」って思って「よければ僕にもDJやらせてください」ってお願いして出させてもらって。当時、横浜に住んでたんだけど地元の仲間と横浜で不定期にDJイベントをやっていて、ちょうど和モノの素晴らしさに気づきはじめた時だったの。横浜のイベント自体は、インディーダンスやアシッドジャズなんかが混ざった当時のいけすかない感じが凝縮されたありがちなものだったんだけど(笑)。
ネモト:和モノに目覚めたきっかけは何だったんですか?
ヤマウチ:きっかけは完全にザ・ハプニングス・フォーの『アリゲーター・ブーガルー』。元々はジャズのルー・ドナルドソンの曲なんだけど、これに日本語詞をつけて演奏している人たちがいたのか!?っていうのが本当に衝撃で。すごくヒップに思えたの。
ネモト:ガレージ的な解釈のロックなものとしてよりも、もうちょっと洗練された音楽?
ヤマウチ:そう。完全にレアグルーヴ~アシッドジャズの流れ。世代的にパンクの後のニューウェイヴの時代に音楽聴き始めて、そこから自分が聴いてきたものと今の気分が完全に合致した気がしたのね。ニューウェイヴって色んなものを内包してたから、いわゆるオールディーズを再発見するみたいな動きもあって、
ネモト:60年代とかの昔の曲を、ニューウェイヴバンドがカバーしてっていうのも多かったし。
ヤマウチ:自分はネオサイケ系のバンドがすごく好きだったから、そうすると当然さかのぼるんですよ。
ネモト:60年代とかのルーツのものをね。
ヤマウチ:そう。だから新しいものを聴きつつ、60年代のものも当たり前にあるっていう。
ネモト:そこは俺も近いものがあって、10代の頃パンクが好きで、そうするとJAMとかジョニー・サンダースとかラモーンズが60年代の曲やってるっていうので聴いていったから。
ヤマウチ:聴くきっかけや好きなものは人それぞれだけど、実はみんな同じものを聴いてたっていう(笑)。
ネモト:さかのぼると同じようなところに辿り着くんだよね。
ヤマウチ:そのへんで俺は一度挫折感があるというかねえ。自分は北海道の函館から出てきて、そこそこ自分では音楽いっぱい聴いてる自負があったんだけど、まぁ打ちのめされるよね。東京の連中、みんなすっげぇところまで聴いてるな!こんなところまで聴くか!?っていう。だったら俺も聴いたるわい!って
ネモト:レコードとかを手に入れられる環境が人によって違うからね。
●今みたいにYouTubeで聴けたり、ネットで購入したり出来ないですものね。
ネモト:当時は雑誌とラジオくらいしかなかった。
ヤマウチ:あとレコ屋のお兄さんやDJが最大の情報源だなって痛感しましたよ。WOODSTOCKのヨケ(除川)さんとかパイドパイパーハウスの長門さんとかHi-Fi RecordやZESTのみなさんとか……そういうレコード屋の人に教わって深く知っていって。そうこうしているうちに夜遊びしたくなって、いろんな意味で六本木は敷居が高いから、下北のZOOでエエ感じに遊ぶ、みたいなそういう時代ですよ。ZOOではメチャクチャかっこいいクラッシュの「Should I Stay Or Should I Go」とかTレックスの「Solid Gold Easy Action」のカバーがかかっててDJの人に訊いてクリューメンを知ったりとか。
ネモト:ZOOは1回しか行ったことないな。
ヤマウチ:曜日代わりでガレージの日とか、レゲエの日とかあって遊びやすかったよ。俺はよく木曜のニューウェイヴの日に行ってて、そんなにお客さんがたくさんいるわけでもなかったからすごくリラックスして楽しめた。瀧見憲司さんの「LOVE PARADE」はまたすごい人だったけど。小野島大さんの「NEWSWAVE NIGHT」も楽しかったよ。
ネモト:渋谷系に繋がっていく話だね。
ヤマウチ:そう。完全にZOOで起こってたことと繋がる。
ネモト:その頃って曜日でジャンルが決まっていても、別の日に遊びに行ったりとか普通だったよね。
ヤマウチ:そうなの。ぜんぜんアリだった。ニューウェイヴの日によく見る人が土曜のオールジャンルの日にも普通にいたり。
ネモト:ヒップホップのイベントにロッキン・ジェリー・ビーンがいたりとか、そういうのもありえたし、店に遊びに来るノリってあったから。
ヤマウチ:対立構造っていうのは意外となくて、面白い時代だったなって思う。その対立構造っていうのは、なんとなくだけど、ジャンル別じゃなくてジャンル内にあるっていうか。近親憎悪じゃないんだけど……ここでね、ネモトくんと俺の、距離感の話になるんだけど。
ネモト:同じ音楽を好きな同じシーンにいても、出会うきっかけがなかったしね。