ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #7ゲスト:あヴぁんだんど 宇佐蔵べに
SPECIAL[2017.11.22]
ロックンロール・レーベル「DECKREC」主催のネモト・ド・ショボーレ氏が、交友のある音楽、映画、漫画、演劇…様々な場で活躍する多種多様な人たちを迎えて送る、ジャンルレストークセッション「TALKIN' REC TAPES」。
第7回目のゲストは、あヴぁんだんどの宇佐蔵べにさん。10代・女の子・アイドルと、初づくしの対談となりました。
●お二人はどこで繋がったんですか?
ネモト:元々はLEARNERSきっかけで知り合って。そしたら、ヨシノモモコさんを好きだっていうからびっくりしたんだよね。他にも俺が90年代にいた場所のものを好きでいてくれて、RON RON CLOUの写真をあげてたり。RON RON CLOUのウラさんとも、ヨシノさんとも俺はバンドを一緒にやってたから。
べに:凄い人と喋ってる。
ネモト:いやいや(笑)。オールディーズとかも好きなんだよね?それでLEARNERS好きになったの?
べに:逆で、LEARNERSきっかけでオールディーズが好きになったんです。
ネモト:昔から古い音楽が好きだったわけじゃないんだ。
べに:坂本九さんとか大瀧詠一さんは好きだったんですけど、外国のは全然知らなくて。
ネモト:そうなんだね。俺がやってる CHILDISH TONESも聴いてくれてたり、DJでThe Nerdsとかもかけてくれたり。The Nerdsなんてそれこそ20年位前に作った音源だから、今やってるものも含め、10代にも伝わるのか!と思って。
べに:伝わりますよ〜。
●この対談では一番の年齢差ですね。
ネモト:そうそう。アイドルは初。
べに:やったー!
ネモト:でもうさべにちゃんは、アイドルってフォーマットは使ってるけど、バンドやってる女の子と一緒だなって思ってて。好きなものとか掘ってるものとか。DJもやるし、アイドルって形は使ってるけど、中身はバンドマンと同じなんだなと思ってて、それで興味を持って今回誘いました。
べに:嬉しいです。
ネモト:あヴぁんだんど自体バンドみたいだもんね。
べに:それ、たまに言われるんですけど、どういう意味なんでしょう?
ネモト:基本的にはアイドルは作ったものを演じるとかが多いけど、うさべにちゃんたちは自分でセルフプロデュースして、自分でこの曲やりたいとかも決めたりしてるから、アイドルの皮を被ったバンドマンみたいなイメージがある。
べに:いい言葉ですね(笑)。
ネモト:いっぱいやりたいことがあるんだろうなって。
べに:いっぱいありすぎて、どれも中途半端になりそうで。
ネモト:自分が10代の頃とかそうだったよ。ただ知りたいから色々調べたり見たりしてるだけで、それをどうアウトプットしていいか全然わかんなくて。でもその時蓄積した情報とかは、今の自分に全部繋がっているから。今はいっぱい見たり聴いたりするのが大事なんだと思う。
べに:横尾忠則さんが好きなんですけど、横尾さんが「20歳までに吸収した情報で、その後の人生が決まっていくんだ」って言ってて、あぁそうかぁ、いろんなもの見ようって。
●今ちょうどそのくらいの年齢ってことですよね。
べに:はい、次で19歳です。
ネモト:自分が18歳の時考えたら、こんなこと出来てなかったな。横尾さんも60年〜70年代からの人だし、古いものが好きなのかな?
べに:歴史を作っていった人が好きな気がします。
ネモト:90年代って、それまであったものをデザインし直したっていうか、とくに過剰に新しいもの生まれてなくて。最近の下北の動きとか見てると、その90年代に自分が過ごした空気感と同じようなものを感じてて。そういう中にあヴぁんだんどもいて、昔だったらアイドルがこんな形で出てくることはなかったし、今の方が自由なんだなって。変な大人に囲われてない分、好きにやれてるというか。俺らの世代じゃ考えられないけど。
べに:確かに今の時代だから出来てるのかもしれないですね。
ネモト:相方のこたおちゃんも絵描いたりしてるよね。この間CDのジャケット描いてるのを見て、凄い絵を描くな、この子はと思った。
べに:ロマン優光さんのプンクボイのジャケットを描いていて。
ネモト:こたおちゃんはお母さんが友沢ミミヨさんだから、この間LEARNERSのライブに漫画家のカネコアツシさんと一緒に行ったら、漫画家繋がりで二人は知りあいだったりして。
●LEARNERS界隈にいろんな方が集まってるんですね。
ネモト:古いロックンロールが好きな人とかが人脈的に集まってたりするかな。でも、古いロックンロールって、モッズだったりガレージだったりロカビリーだったりシーンで分けられちゃうんだけど、LEARNERSの周りは90年代の渋谷系の人脈とかもいるし、その辺がごちゃまぜになっているから、いろんな人と出会える場だったりする。まぁチャーベくんがそういうの気にしない人だったりするからね。
べに:チャーベさん、幅広いですよね。追いかけられない、広すぎて。
ネモト:ヨシノさんのことは何で知ったの?
べに:ヨシノさんは何でだったか、あんまり覚えてないんですけど、お客さんがお薦めしてくれたか何かで知ったのかなと。
ネモト:ヨシノさん好きとか、俺の中では突然変異みたいな、どこでそれを知ったのっていう驚きがあって。
べに:最初に知ったのがThe Apricotsで。
ネモト:それもマニアックだね(笑)。
べに:アルバム『Swingin'! Smilin'!』の中に『Why Do Fools Fall In Love』が入っていて、あぁこういう曲あるんだって聴いてたら、あれLEARNERSさんがカバーしてるじゃんってなって、その時ちょうど『アメリカン・グラフィティ』を見て、サントラも借りて聴いたら、あー!ってこの曲をカバーしてたんだって。それで好きになりました。
ネモト:その点と点が線になるっていうのは快感だからね。それってDJとかやってるとモロ感じるじゃん。このバンド、このカバーやってるんだとか。元々俺もそうだからね。パンクバンドが60年代のカバーやってるって調べたら、もっと前があるとか気付いて。
べに:楽しいですよね、辿るのが。LEARNERSさんのおかげでオールディーズ好きになったのは、やっぱり原曲を調べたら色々広がっちゃったっていう。
ネモト:うさべにちゃんにとってはオールディーズじゃないんだよね。グッディーズってやつで、昔の言葉で「Oldies But Goodies」って言葉があって、50年代の曲が流行った時にそういうキャッチコピーで売り出してて。うさべにちゃんにとっては、古いものじゃない、新しい音楽っていうか。
べに:あぁ、はい。私にとっては全部が新しい。
ネモト:60年代の音楽って俺が生まれるちょっと前のものだけど、聴いた時には物凄い新しいと思った。THE JAMってバンドのポール・ウェラーって人が、THE WHOの音楽を聴いた時のことを「過去から未来がやってきた」って言ってて、まさにそれだなって感じ。
べに:しっくりくる言葉。
ネモト:だから音楽だけじゃないんだよね。うさべにちゃんは音楽にまつわる文化が好きだってことが凄く重要だと思ってて。
べに:好きです。ファッションとかいろんな動きも。
ネモト:俺も80年代に10代でパンクバンドをやってて、その時はパンクの周りも知りたくて調べたり。SEX PISTOLSにはマルコム・マクラーレンっていう仕掛け人マネージャーがいて、セディショナリーズってパンクファッションのブランドがあって、今のヴィヴィアン・ウエストウッドに繋がるものがあって、とかそういうのを調べたりしてた。その後18歳で60年代に興味持つようになるんだけど、それもパンクバンドが60年代の曲をカバーしてたから知って、それで俺はモッズになって、90年代の前半はモッズのシーンにいた。掘ることは、自分の人生が変わるようなことが起きると思う。
べに:私も掘り続けます。LEARNERSさんもみんなファッションが素敵だなと思ってて。
ネモト:好きなものを着たいんだよね。でもアイドルって着せられてるイメージがあるじゃん。
べに:私は着たくない服を着て、踊りたくないって思ってて。この間もバンタンデザイン研究所の卒業制作でショーモデルとして選ばれて、服を作ってもらったんですけど、その時も「ここはどうかと思うんです」とか結構細かくやりとりをして、いいものが出来たので、今は衣装としてそれを着てます。